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2023 年度 実施状況報告書

自閉スペクトラム症モデル動物シナプスの2光子顕微鏡を用いた病態の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K07363
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

野口 潤  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 室長 (40421367)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード自閉スペクトラム症 / 自閉症 / 樹状突起スパイン / シナプトソーム / マーモセット / マウス
研究実績の概要

自閉スペクトラム症(以下自閉症)は、社会的コミュニケーションの障害、常同的で反復的な行動、感覚(聴覚など)の変化などを特徴とする発達障害である。自閉症関連遺伝子にはシナプスタンパク質が多く含まれ、シナプス機能の変異が自閉症の病態の基盤となっている可能性が高い。シナプス機能は含有するタンパク質や核酸、細胞内小器官(オルガネラ)、細胞外マトリクスなどに依存して変化すると考えられる。我々はバルプロ酸曝露自閉症モデルマーモセットとマウスを作出しており、それらを用いてシナプスの解析を行っている。特に、今回個々のシナプスとその近傍の樹状突起における局所のRNAあるいはタンパク質を解析している。そのために、自閉症モデル動物の脳をホモジナイズし、シナプトソームという小胞状になったシナプスを抽出する方法論を整備した。蛍光タンパク質を用いて特定のシナプスを標識することで、2光子顕微鏡観察によるシナプス機能の評価とシナプス機能の物質的基盤を連携させることが可能となった。自閉症モデルマウスとコントロールマウスからシナプトソームを精製し、mRNA-seqによるトランスクリプトーム解析と質量分析を用いたプロテオーム解析を実施した。活動シナプスを標識するためのタンパク質プローブのベクターは、培養細胞における発現を確認後、生体脳における発現量の確認中である。自閉症に関連する脳領域の特定のシナプスについて検討を実施し、潜在的な治療標的の同定を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

◆Synaptosome (シナプトソーム: SN)精製の最適化: ホモジナイズした脳をショ糖勾配密度遠心分離などによって精製することで、シナプス前部とシナプス後部の一部がつながった膜小胞(SN)が得られる。我々はビーズを用いた脳組織の破砕を用いてシナプス後部(樹状突起スパイン)の成分をより保存するように方法を最適化した。
◆マーモセット大脳皮質SN分画のオキシトシン受容体の検出: 我々は、マウスあるいはマーモセットのSN分画をフローサイトメトリー法で解析し、SNが高純度で精製できることを確認した。また、オキシトシン受容体がマウスと同様にマーモセット大脳皮質の分画に発現していることを見出した。
◆シナプス活動を検出するシナプスプローブの準備: 神経細胞に蛍光タンパク質を発現させSNをフローサイトメーターを用いてソーティングすることで、特定の神経細胞由来のSNを精製可能である。活動シナプスを標識するタンパク質プローブ(SynTagMA)については、培養細胞における発現は確認し動物個体におけるベクター発現の最適化を実施している。
◆SNが含有するRNA, タンパク質の解析: SNの含有RNAとタンパク質をそれぞれRNA-seqと質量分析法を用いて解析した。含有タンパク質の解析によってシナプスタンパク質がSNに豊富に含まれており確かにシナプスがSN分画に高度に濃縮されていることが示された。バルプロ酸曝露自閉症モデルマウスとコントロールマウスの比較解析を現在実施している。

今後の研究の推進方策

◆シナプスにおける遺伝子発現およびタンパク質組成の差異の検討: 自閉症モデル脳と対照脳から単離したシナプトソームにおけるmRNA発現をRNA-seqを用いて解析する。あるいは質量分析を用いたプロテオーム解析を行う。特定の神経細胞を蛍光タンパク質で標識し、その神経細胞の軸索あるいは樹状突起スパインを含むシナプトソームをフローサイトメトリーを用いて選別し、解析に用いる。
◆活動依存的シナプス変化の解析: 自閉症モデル動物の神経活動に伴うシナプスの分子変化を調べる。カルシウム依存性蛍光タンパク質を用いて活性シナプスを単離し、あるいはチャネルロドプシンタンパク質を用いてシナプスを活性化させ、そのシナプスの含有RNAとタンパク質を上記と同様に解析する。
◆シナプトソームの細胞内小器官の解析: 自閉症モデル動物におけるシナプトソーム内の細胞内小器官の存在と役割を調べる。自閉症との関連が既に報告されているミトコンドリア機能を解析する。また、エクソソームを回収してRNAもしくは表面タンパク質を解析する。
◆シナプス機能を標的とした治療的介入: 社会性に影響を与えるとされるペプチドホルモンであるオキシトシンの鼻腔投与によって、マーモセットのシナプス機能に変化が生じることを我々は報告している(DOI: https://doi.org/10.1101/2022.08.24.505057.)。オキシトシン投与マーモセットに対してRNA-seqあるいはプロテオーム解析を実施する。自閉症のシナプス機能障害を改善するための潜在的治療標的を見出す。

次年度使用額が生じた理由

主たる理由: 国内学会をオンライン参加とすることで、その部分の旅費が発生しなかった。消耗品を他の研究費で購入したものを流用するなど で余剰が生じた。 使用計画: 2023年度と同様、試薬等の消耗品や特注品の購入にあてる。RNAシークエンスなどの外注費用やタンパク質 質量分析に 充当する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Altered projection-specific synaptic remodeling and its modification by oxytocin in an idiopathic autism marmoset model2024

    • 著者名/発表者名
      Jun Noguchi, Satoshi Watanabe, Tomofumi Oga, Risa Isoda, Keiko Nakagaki, Kazuhisa Sakai, Kayo Sumida, Kohei Hoshino, Koichi Saito, Izuru Miyawaki, Eriko Sugano, Hiroshi Tomita, Hiroaki Mizukami, Akiya Watakabe, Tetsuo Yamamori, Noritaka Ichinohe
    • 雑誌名

      Communications Biology (in press)

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 大脳皮質神経細胞のシナプスを構成する分子の解析2024

    • 著者名/発表者名
      野口潤、磯田李紗、渡邉惠、中垣慶子、境和久、水上浩明、川島祐介、一戸紀孝
    • 学会等名
      第13回日本マーモセット研究会大会
  • [学会発表] Automatic Call Classification of Autism Model Marmosets by Deep Learning and Analysis of Their Vocal Development.2023

    • 著者名/発表者名
      Uesaka M, Kawauchi H, Yamaoka K, Wakabayashi Y, Kinoshita Y, Ono N, Noguchi J, Watanabe S, Ichinohe N, Benner S, Yamasue H.
    • 学会等名
      Proc. APSIPA ASC
  • [学会発表] 自閉症モデルマーモセットの大脳皮質トランスクリプトームとPET画像から示唆されるヒト自閉症のサブタイプ2023

    • 著者名/発表者名
      渡邉 惠、小倉 淳、加藤 孝一、中垣 慶子、土屋 明子、野口 潤、磯田 李紗、小賀 智文、一戸 紀孝
    • 学会等名
      第46回日本神経科学大会

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公開日: 2024-12-25  

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