研究課題/領域番号 |
22K07371
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中村 庸輝 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (60711786)
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研究分担者 |
森岡 徳光 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (20346505)
中島 一恵 (久岡一恵) 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20393431)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミクログリア / 細胞老化 / 認知機能障害 / 精神神経疾患 |
研究実績の概要 |
昨年度、作製方法を確立した細胞老化誘導-ミクログリア細胞培養系では、リポポリサッカライド (LPS) 刺激による炎症性サイトカイン発現量が有意に増強されることを明らかにした。本年度は、加齢との関連性が示されているサイトカインとしてインターロイキン1β、インターフェロンβ を用い、これら炎症性刺激に対する細胞老化誘導-ミクログリア細胞の炎症応答性を評価した。しかし、両刺激に対する炎症応答性に統計学的な有意な変化は認められなかった。従って、細胞老化誘導-ミクログリア細胞では、LPS の受容体である Toll-like receptor 4 の下流経路に対して、特異的に細胞老化の影響が及んでいる可能性が示唆された。
自然老化マウスを使用した検討においては、若齢マウス (3ヶ月齢) と比較して、老齢マウス (24 ヶ月齢) では社会行動性や、新規環境下における摂餌までの時間が低下し、うつ・不安様行動を示すことを明らかにした。また、これらの行動表現系との関連性が示されている脳部位である前帯状皮質、海馬、島皮質においてミクログリアを観察した結果、細胞老化マーカーである p16 INK4a の発現割合が亢進していることを明らかにした。さらに、海馬ミクログリアにおいて、加齢に伴い発現が増加するタンパク質 (概要執筆時、未公表のため便宜上 "タンパク質-X" とする) を同定した。タンパク質-Xは、免疫応答において重要な役割を担うことが報告されていることから、さらに詳細な機能解析を行い、うつ・不安様行動との関連性を評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、細胞老化を誘導したミクログリア細胞培養系を用いた細胞機能解析、自然老化マウスの行動解析および脳内の遺伝子発現解析の結果から、ミクログリアの細胞老化が中枢神経機能へ与える影響の一端を明らかにした。さらに、老年期精神神経疾患の創薬標的候補も同定した。また、ミクログリアに対して加齢の影響が観察された、より詳細な脳部位の機能に焦点を当てる準備も整えることができたため、本研究課題は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
細胞培養系を使用し、細胞複製過多による細胞老化がミクログリア機能にもたらす影響の一端を明らかにした。次年度は、本研究課題で確立した細胞老化誘導-ミクログリア細胞を若齢マウスへ脳局所的に移植し、老齢マウスで細胞老化が確認された脳部位 (前帯状皮質、海馬、島皮質) の機能と行動表現型に、ミクログリアの細胞老化が与える影響を評価する。
また、本年度までに同定した、加齢に伴い海馬ミクログリアで発現増加するタンパク質-X (項目5 を参照) の機能制御が老齢マウスで生じる "うつ・不安様行動" に及ぼす影響を評価し、老年期精神神経疾患に対する新たな治療戦略の立案につなげたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬および抗体の調達の方法の工夫などにより、当初計画より経費の使用が節約できた。繰り越し分に関しては、次年度以降に使用する試薬の購入費などに充てる予定である。
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