研究課題/領域番号 |
22K07372
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
多田 美紀子 横浜市立大学, 医学研究科, 客員講師 (30722467)
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研究分担者 |
土井 宏 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10326035)
竹内 英之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30362213)
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ALS / FTLD / 非膜オルガネラ / RNA結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位・下位運動ニューロンを選択的に障害する進行性神経変性疾患である。未だ疾患メカニズムは明確ではないが、これまで家族性ALSの病因遺伝子として、多数のRNA結合タンパク質(RBP)が報告され、RNA代謝異常がALSの病態形成に重要であることが示唆されてきた。これらのRBPはプリオン様ドメインを持ち、一定の条件で液-液相分離を示す傾向がある。一方、正常の核内・細胞質には液-液相分離を介し、複数の膜のないオルガネラが形成され、RNA代謝において重要な役割を担っているため、これら非膜オルガネラの異常がALS病態にかかわっている可能性が高い。本研究は多数例のALS剖検組織を用いて核内・細胞質の非膜オルガネラの形態異常について病理学的検討を行い、さらに非膜オルガネラの異常について分子細胞生物学的側面、遺伝学的側面からの検証を加えることで、ALSにおける新たな病態進展パスウェイを明らかにすることを目指すものである。本研究ではすでに集積している多数例(30例)のSALS連続剖検例(TDP-43陽性例およびFUS陽性例)において、非膜オルガネラ構造物の局在変化、非膜オルガネラ相互の関連性、凝集体への取り込みといった形態的な特徴を明らかにする。また、各種RBPの非膜オルガネラ構造物への局在を検証する。次に培養細胞(Neuro2a細胞、NSC34細胞)において、ALS病因タンパク質(野生型・変異型TDP-43あるいはFUS/TLSなど)が非膜オルガネラの減少や増加、局在変化に与える動的な影響をSTED顕微鏡で観察・定量し、SALSヒト組織で見られる非膜オルガネラの病的変化が再現可能かを検証する。さらに、ALS/FTLDと疾患コントロールのヒト検体凍結組織を用いて各種核内オルガネラの定量解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では申請者らが集積している多数例(30例)のSALS連続剖検例(TDP-43陽性例およびFUS陽性例)において、非膜オルガネラ構造物の局在変化、非膜オルガネラ相互の関連性、凝集体への取り込みといった形態的な特徴の形態学的評価を行った。非膜オルガネラであるCajal小体について、抗coilin抗体を用いて、10例のSALS症例の脊髄切片を用いて コントロールと比較した免疫組織学的評価を行い、TDP-43、FUS/TLSとの共局在を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はそれぞれの非膜オルガネラに対し、核小体は抗Nucleolin抗体、パラスペックルは抗NONO抗体、PML小体は抗PML抗体、GEMは抗SMN1抗体を用いて評価する予定である。次に培養細胞(Neuro2a細胞、NSC34細胞)において、ALS病因タンパク質(野生型・変異型TDP-43あるいはFUS/TLSなど) が非膜オルガネラの減少や増加、局在変化に与える動的な影響をSTED顕微鏡で観察・定量し、SALSヒト組織で見られる非膜オルガネラの病的変化が再現可能かを検証する。さらに、ALS/FTLDと疾患コントロールのヒト検体凍結組織を用いて各種核内オルガネラの定量解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞を用いた実験を翌年度以降に行う予定としたため、翌年度に各種抗体や試薬・消耗品を購入する計画である。
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