研究実績の概要 |
昨年度に引き続きヒトiPS細胞から誘導した線条体ニューロスフェアおよび中脳ニューロスフェアの特性評価を詳細に解析した。免疫染色による領域特異的マーカーの発現(線条体:GSH2、DARPP32、GADなど。中脳:LMX1、FOXA2、NURR1、THなど)の確認に加えて、カルシウムイメージングを用いて自発的な神経活動が惹起されていることを確認できた。さらにヒトiPS細胞から線条体、中脳の誘導過程における遺伝子発現変化をRNA-seqによる網羅的なトランスクリプトーム解析し、両者の遺伝子発現の特性について必要なデータを概ね収集した。 次に脳の領域間を伝播するシヌクレイノパチーの病態を再現するため、これらの両ニューロスフェアを融合させて作製する多領域脳オルガノイドの作製条件について重点的に検討を行った。その結果、両ニューロスフェアを融合させるための誘導日数、サイズ、融合後の染色条件などを至適化することに成功した。さらに前年度、作製したα-シヌクレイン欠損ヒトiPS細胞およびα-シヌクレイン誘導性発現ヒトiPS細胞を用いて、神経誘導を行い、必要な領域の神経細胞へ誘導できることを確認した。次年度はこの多領域脳オルガノイド特性を詳細に解析するとともに、α-シヌクレインの脳領域間伝播を再現できるかについて検討を進める。またα-シヌクレインの脳領域間伝播について、次年度実施するヒト脳モデルでの実証に先駆けてマウス脳における領域間伝播について解析を行った。その結果、脳に接種したα-シヌクレインはマウスの脳において接種部位から広く拡散することが確認することができた(Gima et al., Regen. Ther., 2024)。
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