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2022 年度 実施状況報告書

パーキンソン症候群におけるChromogranin Bなどバイオマーカー臨床応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K07397
研究機関鳥取大学

研究代表者

瀧川 洋史  鳥取大学, 医学部, 講師 (30511373)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード神経学 / 老年医学 / 神経変性疾患 / 分子生物学 / 進行性核上性麻痺 / 大脳皮質基底核変性症 / パーキンソン症候群 / バイオマーカー
研究実績の概要

パーキンソン症候群(PS)は,原因不明の進行性の神経変性疾患であり,未だに有効な治療法はない.PSでは多彩な臨床像のために臨床診断が困難な場合が少なくない.脳脊髄液を用いた網羅的な質量分析,血清中のmicroRNAを用いたアレイ解析等によってPSのひとつである進行性核上性麻痺(PSP)に特異的なバイオマーカー候補としてChromogranin B(CHGB),アミロイド前駆タンパク(APP)を含めた複数の候補分子,疾患特異的microRNA候補を得てきた.候補分子については,細胞骨格,翻訳後修飾などのpathwayとの関連が明らかとなった.本研究では,PSの早期診断,病態解明,治療戦略に資するバイオマーカーを確立することを目的としている.
PSPに特異的な変化を示すCHGBのバリアントであるbCHGB_6255について,神経系培養細胞より回収したライセートからの免疫沈降法による精製では,微量のためにアミノ酸配列を解析するのに十分量を得ることは困難であった.そこでタグを付したCHGBを神経系培養細胞に強制発現させる系の確立を試みたが,発現効率が極めて悪く,実験条件の検討を行った.
APPのN末側,C末側に対する抗体を用いたWestern blotting法によって得られたPSPに特異的な変化を示す2種類のバリアントについて多数例での解析を進めた.
一方,PSP特異的microRNAについては,血清中のmicroRNAを用いたqPCRによる多数例での検証研究を行い,1種類のmicroRNAにおいてPSP群と対照群において有意差を確認した.中枢神経におけるmicriRNAの発現を解析するために剖検脳から抽出したmicroRNAに対するqPCR,あるいは,剖検脳標本に対するin situ hybridization,免疫組織化学染色による二重染色による解析を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

CHGBについては,バリアントのひとつであるbCHGB_6255がPSPにおいて特異的な変化を示しており,バイオマーカーとしての検証研究,あるいは,神経細胞内での機能解析を進めるためにbCHGB_6255のアミノ酸配列の同定が重要である.神経系培養細胞より抽出したライセートを用いた免疫沈降法での濃縮・精製を試みたが,bCHGB_6255が極めて微量であるために質量分析等の解析に対応する十分量の精製が困難であった.そこで神経系培養細胞にプラスミド発現ベクターを用いてタグを付したCHGBを強制発現させた系での解析を試みた.しかしながらトランスフェクション効率が極めて低く,試薬やDNA量などの条件設定を検討するために進捗が遅れた.
また,microRNAに関する検証では,PSP群と対照群において末梢血中での有意差が確認されたが,中枢神経系での発現を確認するために剖検脳から抽出したmicroRNAについてqPCRによる解析を行ってきたが,microRNAの検出が安定しないために進捗が遅れていた.
また,Covid-19の影響のために試薬が入手し難い状況であることも影響した.

今後の研究の推進方策

タグを付したCHGBタンパクを神経系培養細胞において強制発現し,細胞ライセートを回収し,免疫沈降法などによる精製・濃縮を進め,アミノ酸の同定を行う.また,PSPでは神経細胞内での異常リン酸化タウの凝集体形成が病態に関与していると推測されている.CHGBを強制発現させた神経系細胞内でのタウタンパクの変化について抗タウ抗体によるWestern blotting,免疫染色等による解析を進める.
APPのN末側,C末側に対する抗体を用いたWestern blotting法によって得られたPSPに特異的な変化を示す2種類のバリアントについて多数例での解析を継続する.
一方,microRNAに関しては剖検脳から抽出したqPCRによる解析を継続する.PSPの神経変性においてタウタンパクの凝集体形成が特徴的とされているためmicroRNAの局在,あるいは,タウタンパクとの関連をin situ hybridization,免疫組織化学染色による二重染色にて解析する.
また,質粒分析で疾患特異的な変化を示した他のバイオマーカー候補については,ELISA法などによって検証実験を進める.

次年度使用額が生じた理由

PSPに特異的なバイオマーカー候補について多数例での検証研究を予定しているが,CHBGのバリアントのひとつであるbCHGB_6255の解析に培養細胞内へのトランスフェクションなどを含めた検討を行いながら進めているために本研究費の次年度使用額が生じてしまった.
また,Covid-19の影響のために試薬が入手し難い状況であることも影響した.

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] An autopsy case of progressive supranuclear palsy. Pallido-nigro-luysian type with argyrophilic grains clinically presenting with personality and behavioral changes2022

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Y, Adachi T, Sakuwa M, Sakata R, Takigawa H, Hasegawa M, Hanajima R.
    • 雑誌名

      Neuropathology

      巻: 42 ページ: 447-452

    • DOI

      10.1111/neup. 12815. Epub 2022 Jul 10.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 片側バリズム後に片側アステリキシスを呈した急性期脳梗塞の1例2022

    • 著者名/発表者名
      根鈴 怜治, 村上 丈伸, 河瀬 真也, 瀧川 洋史, 花島 律子
    • 雑誌名

      臨床神経学

      巻: 62 ページ: 793-796

    • DOI

      10.5692/clinicalneurol.cn-001752

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 頭痛診療のOne-up 頭痛患者の生活指導 食事,睡眠,運動,体重,ストレスのコントロール2022

    • 著者名/発表者名
      瀧川洋史,花島律子
    • 雑誌名

      Medicina

      巻: 59 ページ: 2398-2402

    • DOI

      10.11477/mf.1402228647

  • [学会発表] 院内発症脳卒中疑いとして対応した薬剤性脳症の2例2023

    • 著者名/発表者名
      河瀬真也, 柴田 曜,瀧川洋史, 花島律子
    • 学会等名
      第48回日本脳卒中学科学術集会
  • [学会発表] 院内発症脳卒中対応システム定着のための当院の取り組みと効果2023

    • 著者名/発表者名
      柴田 曜,河瀬真也,瀧川洋史,花島律子,坂本誠,黒崎雅道,上田敬博
    • 学会等名
      第48回日本脳卒中学科学術集会
  • [学会発表] Amyloid precursor protein in cerebrospinal fluid as biomarkers for Progressive Supranuclear Palsy.2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Takigawa, Ryoichi Sakata, Ritsuko Hanajima.
    • 学会等名
      第63回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] 進行性核上性麻痺患者の脳脊髄液中YKL-40濃度の推移.2022

    • 著者名/発表者名
      阪田良一,瀧川洋史,花島律子
    • 学会等名
      第63回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] 当院におけるCT灌流画像を用いた超急性期脳梗塞診療の現状2022

    • 著者名/発表者名
      河瀬真也,瀧川洋史,花島律子
    • 学会等名
      第63回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] 進行性核上性麻痺患者における頭痛に関する臨床的検討2022

    • 著者名/発表者名
      瀧川洋史,花島律子
    • 学会等名
      第50回日本頭痛学会総会
  • [学会発表] JALPAC研究の登録状況ならびに登録症例の臨床像に関する検討2022

    • 著者名/発表者名
      花島律子,瀧川洋史,池内 健,小野寺理,饗場郁子,森田光哉,徳田隆彦,村山繁雄,下畑享良,長谷川一子,古和久典,德丸阿耶,金 澤雅人,中島健二,JALPAC研究コンソーシアム
    • 学会等名
      令和4年度神経変性疾患領域における基盤的調査研究班
  • [学会発表] 進行性核上性麻痺における認知機能障害とタウ病理の分布に関する検討2022

    • 著者名/発表者名
      佐桑真悠子,足立 正,鈴木有紀,瀧川洋史,花島律子
    • 学会等名
      第63回日本神経病理学会総会学術研究会
  • [学会発表] 10年来の臥位性高血圧・起立性低血圧を契機にSjoegren症候群に伴う自律神経障害の診断に至った1例2022

    • 著者名/発表者名
      水滝智香, 田尻佑喜, 鈴木有紀, 河瀬真也, 清水崇宏, 足立正, 瀧川洋史, 花島律子
    • 学会等名
      第111回日本神経学会中国・四国地方会
  • [学会発表] 感覚性運動失調,振戦,左外転神経麻痺を呈し,経頭蓋磁気刺激で中枢伝導時間延長を認めた抗NF155抗体陽性CIDPの1例2022

    • 著者名/発表者名
      松本正太, 清水崇宏, 種田建太, 守安正太郎, 渡辺保裕, 瀧川洋史, 緒方英紀, 磯部紀子, 花島律子
    • 学会等名
      第111回日本神経学会中国・四国地方会
  • [学会発表] ELISA法が陰性であったがRNA免疫沈降法で抗EJ抗体,抗Ku抗体が陽性となった抗ARS症候群の一例2022

    • 著者名/発表者名
      池田紗矢,清水崇宏、守安正太郎、岡田直也、種田建太、鈴木有紀、足立正、瀧川洋史、鈴木重明、西野一三、花島律子
    • 学会等名
      第112回日本神経学会中国・四国地方会
  • [学会発表] オビヌツズマブ・ベンダムスチン(GB) 療法後に リング状造影増強効果を伴う病変を呈した 進行性多巣性白質脳症の一例2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木有紀,阪田良一,村上丈伸,瀧川洋史,牧島かれん,足立正,高橋健太,中道一生,三浦義治,花島律子
    • 学会等名
      第112回日本神経学会中国・四国地方会
  • [学会発表] 変動する小脳性運動失調を呈した橋本脳症の1例2022

    • 著者名/発表者名
      山代 薫,守安正太郎,清水崇宏,岡田直也,種田建太,渡辺保裕,瀧川洋史,花島律子
    • 学会等名
      第126回日本内科学会中国地方会
  • [学会発表] ヘミバリスム後に片側アステリキシスを呈した急性期脳梗塞の1例2022

    • 著者名/発表者名
      根鈴怜治,村上丈伸,河瀬真也,瀧川洋史,花島律子
    • 学会等名
      第126回日本内科学会中国地方会
  • [学会発表] 5回目の再発に対して治療し軽快した脳幹脳炎の1例2022

    • 著者名/発表者名
      根鈴怜治,村上丈伸,守安正太郎,瀧川洋史,渡辺保裕,花島律子
    • 学会等名
      第127回日本内科学会中国地方会
  • [学会発表] 複数の脊髄腫瘤に脊髄長軸病変を伴ったフォンヒッペル・リンダウ病の1例2022

    • 著者名/発表者名
      村上丈伸,河瀬真也,増田恭隆,鈴木有紀,阪田良一,瀧川洋史,花島律子
    • 学会等名
      第127回日本内科学会中国地方会
  • [学会発表] 脳静脈洞血栓症に硬膜動静脈瘻を合併した一例2022

    • 著者名/発表者名
      竹内裕彦,松本正太,佐桑真悠子,田尻佑喜,河瀬真也,瀧川洋史,桑本雄平,坂本誠,黒崎雅道,花島律子
    • 学会等名
      第34回日本老年医学会中国地方会
  • [学会発表] 心内血栓摘除術及び左心耳閉鎖術後に心内血栓の再形成を認めた心原性脳塞栓症の一例2022

    • 著者名/発表者名
      岡田直也,守安正太郎,山代薫,種田建太,清水崇宏,森本健一,桑本聡史,瀧川洋史,渡辺保裕,花島律子
    • 学会等名
      第24回中国四国脳卒中研究会
  • [図書] 「頭痛の診療ガイドライン2021」準拠 あなたも名医! ジェネラリストのための頭痛診療マスター【電子版付】2022

    • 著者名/発表者名
      竹島多賀夫
    • 総ページ数
      216
    • 出版者
      日本医事新報社
    • ISBN
      978-4-7849-6682-0
  • [産業財産権] 進行性核上性麻痺の診断マーカー2022

    • 発明者名
      瀧川洋史,花島律子
    • 権利者名
      瀧川洋史,花島律子
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2022-074987

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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