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2022 年度 実施状況報告書

サイログロブリン(Tg)による甲状腺濾胞機能制御機構とその破綻による病態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K07405
研究機関帝京大学

研究代表者

鈴木 幸一  帝京大学, 医療技術学部, 教授 (20206478)

研究分担者 吉原 彩  東邦大学, 医学部, 講師 (10439995)
山中 大介  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10553266)
三上 万理子  帝京大学, 医療技術学部, 研究員 (20840276)
藤原 葉子  帝京大学, 医療技術学部, 研究員 (50392494)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード甲状腺 / サイログロブリン / 細胞内シグナル伝達
研究実績の概要

甲状腺機能は下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって厳密に制御されると一義的に理解されてきた。しかし、我々は甲状腺濾胞内に貯蔵される甲状腺ホルモン前駆体であるサイログロブリン(Tg)が、TSHによって誘導される甲状腺機能遺伝子を転写レベルで制御する強力な生理活性物質であることを明らかにしてきた。これまでの検討で、TgはTSH受容体下流のPKA経路、MAPK経路、PI3K/Akt経路などに関わるタンパク質のリン酸化を誘導することを明らかにしたが、それらを阻害してもTgの作用を打ち消すことはできなかった。したがって、Tgの作用はこれらのシグナルに介在するのではなく、それとは全く別の新たなシグナル伝達経路を利用している可能性が考えられた。
先ず、リン酸化プロテオミクスによる網羅的な解析を行い、Tgシグナルに関連すると考えられる候補遺伝子を複数得た。これらに対する特異的阻害剤やsiRNAを用いて、Tgによる遺伝子発現抑制効果が影響を受けるか検討したが、いずれも単独ではTgの作用を打ち消すことができなかった。したがって、Tgがタンパク質のリン酸化以外のシグナル伝達機構を持つ可能性も考慮するために、約400種類の阻害剤を含むライブラリーを用いてTgシグナルの全体像を明らかにするための検討を行った。具体的には、96 well plateに培養したラット甲状腺FRTL-5細胞の培養液に、濾胞内濃度のTgと阻害剤ライブラリーに含まれる各阻害剤を添加する。24時間経過後にRNAを抽出し、real-time PCRによって甲状腺特異的遺伝子の発現解析が完了した。現在、Tgの作用がキャンセルされた阻害剤の作用点に関わる遺伝子のパスウェイ解析を行い、Tgシグナルの全体像を明らかにしている最中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

既にリン酸化プロテオミクス解析を完了し、阻害剤ライブラリーのスクリーニングに着手し、その実験も完了している。現在データのパスウェイ解析中であるが、それによって得られた候補系路のvalidationを行うことにより、Tgが利用する細胞内シグナル伝達経路が解明されることが期待出来る。

今後の研究の推進方策

研究計画に変更はなく、次年度は前年度の検討によって得られたTgシグナルに関連する阻害剤の作用点の遺伝子に対して、CRISPR-Cas9システムやウイルスベクターを利用したゲノム編集法によって抑制、または亢進状態に陥らせたstableなFRTL-5細胞クローンを作製し、甲状腺機能遺伝子の発現や細胞内局在を野生型と比較解析する。具体的には、培養液に濾胞内濃度のTgを上記のクローン細胞に添加し、総タンパク質を抽出する。その後、Tgシグナル遺伝子の欠損型、過剰型がその下流のシグナルに影響を受けるか特異的リン酸化抗体等を用いて、Western blottingによって検証する。細胞内局在の検討に関しては免疫細胞蛍光染色を行い、共焦点レーザー走査型顕微鏡で甲状腺特異的遺伝子の発現調節に関わる転写因子(PAX-8, TTF-1, TTF-2など)の細胞内局在が変化するか観察する。二重チャンバー細胞培養システムを用いて培養し、放射性ヨード輸送能や甲状腺ホルモンの分泌量等を測定し、Tgシグナル異常状態における甲状腺機能に与える影響を解析する。また、TgがTSHと拮抗する作用機序を明らかにするため、培養液にTSHおよびTSHシグナルの促進剤であるforskolinやdbcAMPをTgと同時に添加して上記と同様な解析を行い、TgシグナルとTSHシグナルとの相互作用を明らかにしてTgの作用機序を解明する。

次年度使用額が生じた理由

2年目以降は人件費の支出が見込まれるため、初年度は最低限の使用にとどめ、残金は次年度へと持ち越した。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Autoimmune responses and immune mediators induced by cytosolic DNA fragments in Graves’ disease.2022

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara Y, Luo Y, Kiriya M, Kawashima A, Yoshihara A, Tanigawa K , Nakamura Y, Maruyama K , Watanabe S, Suzuki K.
    • 雑誌名

      Current Innovations in Medicine and Medical Science

      巻: 5 ページ: 35~59

    • DOI

      10.9734/bpi/cimms/v5/3916A

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 論文紹介 基礎2022

    • 著者名/発表者名
      桐谷光夫、鈴木幸一
    • 雑誌名

      日本甲状腺学会誌

      巻: 13(2) ページ: 189-189

    • 査読あり
  • [学会発表] 甲状腺濾胞細胞における硫酸転移酵素Sult1a1の発現調節機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      中村康宏、吉原彩、桐谷光夫、川島晃、藤原葉子、谷川和也、丸山桂司、渡辺茂和、鈴木幸一
    • 学会等名
      第38回甲状腺病態生理研究会
  • [学会発表] 甲状腺濾胞内に蓄積するサイログロブリン(Tg)は新規内腔側ヨード輸送体SLC26A7の発現と細胞膜局在を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      桐谷光夫、川島晃、中村康宏、谷川和也、藤原葉子、谷村優太、近藤哲夫、鈴木幸一
    • 学会等名
      第95回日本内分泌学会学術総会
  • [学会発表] TSHは甲状腺細胞における硫酸転移酵素Sult1a1の発現および硫酸転移活性を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      中村康宏、吉原彩、桐谷光夫、川島晃、谷川和也、藤原葉子、Luo yuqian、丸山桂司、渡辺茂和、鈴木幸一
    • 学会等名
      第95回日本内分泌学会学術総会
  • [学会発表] Follicular thyroglobulin antagonizes the action of TSH and regulates the expression and localization of the novel iodide transporter SLC26A72022

    • 著者名/発表者名
      Mitsuo Kiriya, Akira Kawashima, Yoko Fujiwara, Tetsuo Kondo, Koichi Suzuki
    • 学会等名
      ICE2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 甲状腺細胞においてTSHは硫酸転移酵素SULT1A1の発現を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      中村康宏、吉原彩、桐谷光夫、川島晃、谷川和也、藤原葉子、丸山桂司、渡辺茂和、根岸文子、唐澤健、鈴木幸一
    • 学会等名
      第5回帝京大学研究交流シンポジウム
  • [学会発表] 甲状腺濾胞上皮細胞内腔側に発現する新規ヨード輸送体SLC26A7の発現調節機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      桐谷光夫、川島晃、藤原葉子、谷村優太、吉原彩、中村康宏、谷川和也、鈴木幸一
    • 学会等名
      第5回帝京大学研究交流シンポジウム
  • [学会発表] TSH and Tg Regulate Expression and Localization of the Novel Iodide Transporter SLC26A72022

    • 著者名/発表者名
      Mitsuo Kiriya, Akira Kawashima, Yoko Fujiwara, Yuta Tanimura, Aya Yoshihara, Yasuhiro Nakamura, Kazunari Tanigawa, Tetsuo Kondo, Koichi Suzuki
    • 学会等名
      American Thyroid Association
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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