研究課題
胆嚢癌(40例)とVater乳頭部腫瘍(10例)を免疫組織化学的に検討し、腫瘍組織を構成する細胞の胃・腸型形質の発現に着目した免疫表現型分類と組織像の特徴を解析した。今回の検討では、claudin18(胃上皮の包括マーカー)、cadherin17(腸上皮包括マーカー)、MUC2(腸杯細胞ムチンのコアタンパク)およびsucrase(小腸吸収上皮のマーカー)を用いて胃・腸型形質の発現を免疫組織化学的に検討した。胆嚢癌はclaudin18とcadherin17の発現から胃型(27.5%)、腸型(27.5%)、胃・腸混合型(12.5%)、その他(32.5%)の免疫表現型に分類された。腸型においては吸収上皮型細胞が優勢であった。組織像に基づいた腸型の基準には杯細胞の存在が重視されてきたが、今回の件では、腸型における杯細胞の出現頻度は低く、むしろ多くの症例でsucrase陽性の吸収上皮型の細胞の出現頻度が高かったことから、杯細胞の出現に基づいた従来の基準では腸型が過小評価されてきた可能性がある。また、ホルマリン固定・パラフィン包埋組織からclaudin18陽性の胆嚢腺癌にはclaudin18.2mRNAの発現が確認された。一方、Vater乳頭部腫瘍は胃型(10%)、腸型(40%)、胃・腸混合型(10%)、その他(40%)に分類された。Claudin18とcadherin17の免疫組織化学解析は胆嚢癌とVater乳頭部腫瘍の細胞系列分類に有用である。また、胆嚢癌とVater乳頭部腫瘍にclaudin18.2とcadherin17に対する分子標的治療の適応が期待される。腫瘍微少環境におけるIgG4陽性形質細胞の亢進が種々の腫瘍において予後不良因子であることが報告されている。37例の管内胆管癌を対象に免疫組織学的に検討し、腫瘍の浸潤先端部におけるIgG4の高発現とIgG4/IgG比が独立した予後因子であることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
胆嚢癌とVater乳頭部腫瘍について腫瘍組織を構成する細胞の胃・腸型形質の発現に着目して免疫表現型分類を行うことができた。Claudin18とcadherin17の免疫組織化学解析は胆嚢癌とVater乳頭部腫瘍の細胞系列分類に有用であり、胆嚢癌とVater乳頭部腫瘍にclaudin18.2とcadherin17に対する分子標的治療の適応の可能性がしめされた。また、管内胆管癌における腫瘍微少環境の観点から腫瘍の浸潤先端部におけるIgG4の高発現とIgG4/IgG比が独立した予後因子であることを見出した。
Vater乳頭部腫瘍の解析症例の追加と新たに胆管癌症例の解析を進める。また、膵胆管上皮の包括マーカーによる免疫組織化学的解析を加え、胃型、腸型および胆道型の臨床病理学的、病理組織学的および分子病理学的解析を進める予定である。
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。
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