研究実績の概要 |
アルツハイマー病脳をシードとして、神経芽細胞にC末端タウを発現させ、タウ凝集体を発現させる系を用いて、763化合物からなる既存薬ライブラリースクリーニングを行った。第一段階のスクリーニングで180化合物が選択され、その後、細胞毒性のあるものを除外するためにLDHアッセーを行い72化合物が排除された。第三段階のスクリーニングでは不溶性タウと可溶性タウを計測し、38化合物に絞り、その後、3症例のアルツハイマー病脳を用い、再現性のある4つの化合物(ランソプラゾール, カルシポトリエン, デソゲステロール, およびペンタミジン)に絞り込んだ。RT-QuiC法(In vitro filament凝集)によってタウ凝集を最も抑制したのはカルシポトリエンだった。最終段階でマウス投与実験をおこなったところ、副作用でマウスの体重が激減したため中止し、二番目に凝集抑制の強いランソプラゾールでマウスへ経鼻投与する実験を行った。投与開始1週間前にアルツハイマー患者脳不溶性画分を基底核に注入し、4ヶ月間投与を行った。ロタロッドテストでは投与3ヶ月目と4ヶ月にDMSO投与群と比較しランソプラゾール投与群では有意に運動活動が良いスコアであった。リン酸化タウ抗体の免疫染色ではリン酸化タウ陽性の領域は外包, 中脳黒質緻密層, 扁桃核, 大脳脚に認められたが、すべての領域において有意にランソプラゾール投与群で少なかった。更に、大脳半球から抽出されたサルコシル不溶性画分のウエスタンブロットのバンドもアルツハイマー病脳注入側および非注入側にてランソプラゾール投与群で低下していた。 ApoEとタウ凝集については、P2Aベクターを用いApoE3とApoE4のアイソフォームによるタウ凝集への影響の違いを調べるために神経芽細胞内で発現系を構築し、ApoEがTauと同程度に発現する系の構築が完成した。
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