研究実績の概要 |
最近、ライフスタイルの変化やコロナ禍のストレスにより気分障害で外来患者さんが増えており、社会的に対策が必要である。現在市販されている抗うつ剤は神経細胞に対する作用が中心となっているが、副作用や薬効発揮までの数週間のタイムラグが問題である。近年、抗うつ剤の一つであるフルオキセチンがグリア細胞の一つであるアストロサイトに添加すると脳由来神経栄養因子 (BDNF) の発現が増加し、抗うつ作用の即効性を示したことが報告されている。そこで本研究は、ラットグリア芽腫由来の C6 細胞を用いた植物抽出物について BDNF プロモーターIV の転写活性のスクリーニングを行った結果、7種の植物抽出物が選抜されていた。今回、この7種類のうち、細胞毒性の報告がなく入手可能可能な4種類の植物を用いた。即ち、ミャンマー産のC. latifolium (葉, 50 g), P. rhydidocarpum (茎, 50 g), とブラジル産 C. spicatus (茎, 20 g と18 g)の2種類を入手し、メタノールで抽出を行った。その結果、それぞれメタノール抽出物 7.63 g、3.97 g, 0.77 g および 0.89 g を得た。これらの用い C6 細胞における BDNF プロモーターIV の転写活性を検討した結果、C. spicatus のメタノール抽出物は転写活性が見られず、C. latifolium と P. rhydidocarpum 抽出物が濃度依存的にBDNFプロモーターIV の転写活性が見られた。しかし、C6 細胞がラットグリア芽腫細胞であるため、現在C57BL/6 マウス脳より単離した初代アストロサイト細胞を株化した培養細胞 AWT 細胞(理化学研究所から入手)を用い BDNF プロモーターIV の転写活性を検討している。
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