機能性胃腸症は消化管に形態的異常がないにも関わらず、腹部膨満感などの症状をきたすもので健常に日常生活を送る者の中にも10-20%の割合であると言われている。その病態は不明なことが多く、日常臨床で行いうる診断方法は確立していない。本研究では、若年健常人の胃腸症状のアンケートとシネMRIによる胃の運動及び胃電図の同時記録を行い、機能性胃腸症の非侵襲的診断方法の確立及びその病態の解明を目指してきた。 被験者は和歌山県内の大学生から募集し、年齢は18-24歳で、健康に日常生活を行なっているものである。募集時の通院、服薬状況についてはアンケート調査によりないことを確認した。被験者は昼食を通常どおり摂取して、午後4時30分からMRI撮像と胃電図の測定を行なった。胃の運動は、シネMRIにて1秒ごとに2スライスの胃の断面を30分間撮像した。同時に上腹部に表面電極を設置し、1チャンネルの胃電図を測定した。2024年3月31現在で、144名の被験者データを収集することができ、そのうち胃腸症状の比較的多い被験者を38名検出した。これらの被験者と症状のない被験者を比較することによって、胃の電気活動と運動の時系列データの解析により症状と関連する指標を探索する。 胃電図と胃の断面の時間変化の解析はMATLABによって独自に開発したプログラムによって行なった。まず胃の断面の画像をコンピューターモニター上でマニュアルでトレースして、その面積を算出した。その面積の時系列変化を解析し、同時測定した胃電図データと比較検討することにより、胃のペースメーカー活動の状態、ペースメーカーの電気活動が胃の運動を正常に引き起こしているかを検討し、胃腸症状との関連を探索していく。
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