研究課題/領域番号 |
22K07456
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研究機関 | 健康科学大学 |
研究代表者 |
田中 将志 健康科学大学, 健康科学部, 教授 (60381167)
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研究分担者 |
猪原 匡史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (00372590)
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TREM2 / ミクログリア / 糖尿病 / 認知症 / 炎症 |
研究実績の概要 |
初年度は、糖尿病環境におけるミクログリアの炎症応答と、候補として着目した生理活性物質の新規抗炎症作用の可能性を検討した。その結果、高グルコースで刺激したミクログリアにおいては、NLRP3インフラマソームを介した炎症応答が惹起され、さらには糖尿病治療薬・イメグリミンが新たなミクログリア活性化抑制作用を有することを見出した。その機序として、オートファジー関連因子・ULK1がイメグリミンにより活性化し、オートファジー非依存的にNLRP3経路を抑制することが判明した。脳内炎症は認知機能低下の原因となるが、本検討により、脳内炎症抑制におけるイメグリミンの新規機能的意義が明らかとなった。当該経路へのミクログリア細胞表面分子・TREM2の関与のさらなる検討により、イメグリミンによるミクログリア形質改善の詳細な分子機序の解明が期待される。 臨床研究として、肥満症・糖尿病多施設共同研究におけるコホートの非肥満2型糖尿病患者を対象とし、血清中の可溶型TREM2(sTREM2)初期値と2年後の認知機能や臨床指標の変化量との関連について縦断解析を行った。2年後の時点でのHbA1c改善群においては、sTREM2初期値が高い程、2年後の腹囲、HOMA-Rが改善し、sTREM2量も減少した。一方、sTREM2初期値と認知機能の変化には有意な関連はないことを認めた。しかしながら、2年後の時点でのHbA1c増悪群では、sTREM2初期値が高い程、認知機能が低下することを見出した。よって、HbA1cモニタリングと組み合わせることにより、血清sTREM2は糖尿病における認知機能低下の新規予知指標となる可能性が明らかとなった。 今後、これらの知見に立脚し、糖尿病に伴う認知機能低下におけるTREM2の病態意義を解明するとともに、ミクログリア形質改善に寄与する可能性がある生理活性物質の作用・機序の詳細を検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ミクログリアに対するin vitroの検討から、糖尿病治療薬・イメグリミンによる新規抗炎症作用とその作用機序の一端を明らかにした。さらに、肥満症・糖尿病コホートにおける2型糖尿病患者を対象とした縦断解析から、血清sTREM2が糖尿病における認知機能低下の新規予知指標となる可能性を見出した。本成果に立脚し、現在、ミクログリアの質的改善作用を有する可能性のある生理活性物質の作用と機序について、分子レベルからの検討に着手するとともに、TREM2経路の病態意義の解明についてもさらなる検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果に立脚し、次年度は、ミクログリアの質的改善作用を有する可能性のある生理活性物質に焦点を当て、活性化ミクログリアに対する作用とその機序について、分子レベルから検討する(TREM2を中心とした関連シグナル分子の同定やその活性化レベル等)。モデルマウス(肥満・糖尿病、認知症)やTREM2欠損マウスを用いた検討も施行し、糖代謝や糖尿病性認知機能低下におけるTREM2の病態意義を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画における生理活性物質の処理条件や臨床研究について、詳細に検討しているため時間がかかり、次年度使用額が発生した。次年度には当該使用額も含め、研究計画にのっとって研究費を使用し、研究を推進する予定である。
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