研究課題/領域番号 |
22K07466
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大川 龍之介 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50420203)
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研究分担者 |
亀田 貴寛 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80758558)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アポリポタンパク転送 / 中性脂肪代謝 / リポタンパクリパーゼ / 高比重リポタンパク / 超低比重リポタンパク |
研究実績の概要 |
1.リポタンパク間のアポリポタンパク転送の定量法の確立 高比重リポタンパク(HDL)とビオチン標識した超低比重リポタンパク(VLDL)とを生体内の平均的なタンパク濃度比で混合し,インキュベーションを行い,その後,超遠心によって再びHDLを分離した.分離したHDL中に転送されたアポリポタンパクをウエスタンブロッティング(ストレプトアビジンで視覚化)および液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)で分析したところ,われわれが既に明らかにしたアポリポタンパクC-II,C-III,Eに加えて,まだ不確定であったアポリポタンパクC-IVがVLDL濃度依存的にHDLに転送されていることを確認した.転送量を定量するために,ELISA法を用いた転送量の評価法を構築すべく,まず初めにアポリポタンパクC-IIを対象に試みた.その結果,HDLタンパク濃度あたりで1.0×10^-5 mg/mL程度まで高感度に定量することが可能となった. 2.VLDL中の中性脂肪の被水解率の評価 アポリポタンパク転送後の各種脂質代謝に与える影響を確認するため,はじめにVLDL中の中性脂肪の被水解率評価法の確立を目指した.血漿を対象とした場合とVLDLを対象とした場合では,リポタンパクリパーゼに対するVLDL中の中性脂肪の水解の速度は異なり,その要因として,血漿中に存在する他のリポタンパクがリポタンパクリパーゼのVLDLへのアクセスを抑制していることが示唆された.この現象を確認するために,各種リポタンパク分画,アルブミンやグロブリンを主に含むリポタンパク以外の血漿タンパク成分を含む分画を用いて検証した.その結果,HDLが最もVLDL中の中性脂肪に対するリポタンパクリパーゼの作用に対する抑制効果が強いことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期待通り,ビオチンを用いて,アポリポタンパク転送量の測定が可能となった.超低比重リポタンパク中の中性脂肪代謝に関しては,高比重リポタンパクが加水分解を抑制するという予想外の結果となった.これは生体内の反応を模倣しているわけではなく,試験管内の評価の上での現象だと考えられ,正確な被水解率の検討には,さらなる条件検討が必要であり新たな課題となっている.
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今後の研究の推進方策 |
アポリポタンパク転送量の評価は,構築したELISA法で可能となったため,今後は本法の性能評価を実施する必要がある.また,アポリポタンパクC-IIだけでなく,他のリポタンパクの定量法の確立も行う.それぞれのアポリポタンパクの定量法が確立した後,様々なリポタンパクを用いて,実際にそれぞれの転送量を確認する.また,同時に検討している超低比重リポタンパク中の中性脂肪被水解率を評価法を今後確立することで,この二つの評価法を組み合わせて,中性脂肪代謝に重要とされるアポリポタンパクの転送が超低比重リポタンパク中の中性脂肪の水解にどのように影響を与えるかが調査可能となると考えている.次年度は,計画していたリポタンパクと各種細胞との相互作用にも着手したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度計画していた実験が予想よりも早く結果が得られた.ただし,課題もあり,次年度の研究計画と上記の課題を次年度に行いたいため.
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