研究課題/領域番号 |
22K07473
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
藤田 浩二 香川大学, 医学部, 助教 (50749421)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / ヒスチジン |
研究実績の概要 |
2022年度において,レンバチニブ耐性肝がん細胞に対するカボザンチニブの有効性をin vitro及びin vivoで明らかにした.マウス皮下に移植した腫瘍のmiRNAの網羅的解析から,カボザンチニブ投与によって有意に変動する10種類のmiRNAを同定した.しかし,miRNAのtransfectionによる機能解析の結果,腫瘍の増殖抑制に寄与するmiRNAは無かった.またマウス皮下に移植した腫瘍のタンパク質も網羅的に解析(プロテオーム解析)した.2023年度は,このプロテオーム解析の結果を踏まえて研究を進めた.カボザンチニブ投与群において対照群と比べて発現の増加しているタンパク質が35分子あった.このうち,TCGAデータベースにて肝細胞癌例の良好な予後と相関するとされるたんぱく質が3種類あった.そのうちの一つ,FTCDに着目した.マウス皮下に移植した腫瘍組織の免疫染色とWestern blotを行うと,カボザンチニブ投与群にておいて対照群に比べて,FTCDの発現が亢進していた.W細胞株での検討にて,野生型肝がん細胞株がレンバチニブ耐性を獲得するとFTCDの発現は低下し,耐性株にカボザンチニブを投与するとその発現は回復した.以上から,FTCDの発現はレンバチニブに対する耐性獲得及びカボザンチニブ感受性と相関していることが分かった.FTCDの生理的機能は,ヒスチジン代謝及びプリン体合成への関与である.神戸大学質量分析センターに依頼し,肝がん細胞株のメタボローム解析をした結果,レンバチニブ耐性株にカボザンチニブを投与すると,細胞内のヒスチジン濃度が有意に上昇することが分かった.以上の結果から,レンバチニブ耐性肝がん細胞におけるカボザンチニブの感受性に,FTCDの発現の変化とヒスチジン代謝経路の変化が相関していることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,miRNAの網羅的解析を行い,negative studyとなったが,プロテオーム解析を追加し,レンバチニブ耐性及びカボザンチニブ感受性と相関するタンパク質を同定することが出来た.メタボローム解析を追加した結果,化学療法感受性とアミノ酸代謝経路の変化の相関に新たに着眼することでできた.以上の内容で論文原稿をまとめて,現在査読有りの英文雑誌に投稿し,査読中の状態である.研究予算をまだ100万円以上残しているので,査読の結果データの追加が必要になれば,追加する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
以上の内容で論文原稿をまとめて,現在査読有りの英文雑誌に投稿し,査読中の状態である.研究予算をまだ100万円以上残しているので,査読の結果データの追加が必要になれば,追加する予定である.特に,FTCDの発現プラスミドを構築し,肝癌細胞に遺伝子導入し,gain of function を評価することが望ましい.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在論文投稿中であるが,査読の結果としてデータの追加が必要になる可能性を考慮し,試薬代の節約に努めた.国際学会での発表時も,年休を利用して出張したので,学会参加費・旅費は私費で支払った.
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