甲状腺癌の低侵襲包括的術前遺伝子検査によるリスク評価システムの開発

2022 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 22K07476
• 研究機関: 福島県立医科大学
• 研究代表者: 志村 浩己 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40303416)
• 研究分担者: 松本 佳子 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (10815145) ; 鈴木 聡 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50381398) ; 鈴木 眞一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70235951)
• 研究期間 (年度): 2022-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 甲状腺癌 / 遺伝子検査 / 穿刺吸引細胞診

研究実績の概要

本研究においては，甲状腺癌の低侵襲術前遺伝子検査方法の確立とそれを加えたリスク評価法の確立を目的とし，穿刺吸引細胞診検体中微量DNAから甲状腺癌における変異遺伝子の検出方法を確立するとともに，新たな超音波検査技術である高感度血流評価や組織弾性評価法による超音波画像評価を加え，先進的な甲状腺癌診断およびリスク評価法を樹立することを目指している。倫理申請を行った上で，甲状腺腫瘍患者における臨床研究を開始している。その結果，Digital PCR法を用いることにより，穿刺吸引細胞診で検体作成後の穿刺針中に残存していた微量な細胞から抽出したDNAを用いて，術前遺伝子診断が可能であることを明らかにしている。最も代表的な遺伝子変異であるBRAFV600E変異は，全検体の26%，乳頭癌症例の66%に検出された。また，臨床的リスクに関連するTERT遺伝子変異においては，C228T変異は14%，C250T変異は2%に認められた。また，微量検体からRNAを抽出し，cDNAを合成し，遺伝子転座型変異同定の検討を実施している。これらの遺伝子変異情報と臨床データの評価により，術前のリスク評価が可能であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和４年度に実施予定の研究は概ね順調に進行している。

今後の研究の推進方策

甲状腺腫瘍の穿刺吸引細胞診実施後の廃棄穿刺針の洗浄液を用いた遺伝子分析研究を，引き続き各患者から同意の下で継続する。また，得られたcDNAを用いた分析も開始する。これらの結果を，術後の組織診断および摘出組織の遺伝子検査結果と比較を行い，廃棄穿刺針を用いた遺伝子検査の性能評価を行う。さらに，上記研究を行った患者の超音波所見を，病理検査結果を明かさない状態で評価を行い(B-mode評価，血流評価，組織弾性評価），血液検査やCT検査などの他の検査結果および術後経過の情報とともに解析を行う。これらにより，甲状腺癌リスク評価の方法を探索する。

研究成果

• [雑誌論文] Ultrasonography-based reference values for the cross-sectional area of the thyroid gland in children and adolescents: The Fukushima Health Management Survey (2023)
  • 著者名/発表者名: Haruka Ejiri, Mahiro Asano, Nana Nakahata, Satoshi Suzuki, Ayako Sato, Natsuki Nagamine, Chisato Takahashi, Yukie Yamaya, Manabu Iwadate, Takashi Matsuzuka, Tetsuya Ohira, Seiji Yasumura, Satoru Suzuki, Fumihiko Furuya, Hiroki Shimura, Shinichi Suzuki, Susumu Yokoya, Hitoshi Ohto, Kenji Kamiya
  • 雑誌名: Clinical Pediatric Endocrinology 巻: 32(1) ページ: 52-57
  • DOI: 10.1297/cpe.2022-0057
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 福島県原子力発電所事故後における小児・若年者甲状腺癌 (2023)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己
  • 雑誌名: 医学と薬学 巻: 80(3) ページ: 275-280
• [雑誌論文] 日本における成人の甲状腺（微小）結節の診断について (2022)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己
  • 雑誌名: 日本甲状腺学会雑誌 巻: 13(1) ページ: 5-10
• [雑誌論文] Matrix-Assisted Laser Desorption Ionization-Time-of-Flight Mass Spectrometry with Time-of-Flight Peak Analysis for Rapid and Accurate Detection of Group B Streptococcus in Pregnant Women (2022)
  • 著者名/発表者名: Daiki Tanno, Kyoichi Saito, Kazutaka Ohashi, Masahiro Toyokawa, Yukio Yamadera, Hiroki Shimura.
  • 雑誌名: Microbiology Spectrum 巻: 10(3) ページ: e0173221
  • DOI: 10.1128/spectrum.01732-21
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Editorial: The Legacy of Dr. Leonard D. Kohn to Thyroid Pathophysiology (2022)
  • 著者名/発表者名: Giuliani Cesidio、Shimura Hiroki、Chung Jae Hoon、Napolitano Giorgio
  • 雑誌名: Frontiers in Endocrinology 巻: 13 ページ: 906340
  • DOI: 10.3389/fendo.2022.906340
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Possible Association Between Thyroid Nodule Formation and Developmental Alterations in the Pituitary-Thyroid Hormone Axis in Children and Adolescents: The Fukushima Health Management Survey (2022)
  • 著者名/発表者名: Satoshi Suzuki, Satoru Suzuki, Manabu Iwadate, Takashi Matsuzuka, Hiroki Shimura, Tetsuya Ohira, Fumihiko Furuya, Shinichi Suzuki, Seiji Yasumura, Susumu Yokoya, Hitoshi Ohto, Kenji Kamiya
  • 雑誌名: Thyroid 巻: 32(11) ページ: 1316-1327
  • DOI: 10.1089/thy.2022.0327
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Achievements and Current Status of the Fukushima Health Management Survey (2022)
  • 著者名/発表者名: Seiji Yasumura, Tetsuya Ohira, Tetsuo Ishikawa, Hiroki Shimura, Akira Sakai, Masaharu Maeda, Itaru Miura, Keiya Fujimori, Hitoshi Ohto, Kenji Kamiya
  • 雑誌名: Journal of Epidemiology 巻: 32(12) ページ: s3-s10
  • DOI: 10.2188/jea.JE20210390
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A Comprehensive Review of the Progress and Evaluation of the Thyroid Ultrasound Examination Program, the Fukushima Health Management Survey (2022)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Shimura, Satoru Suzuki, Susumu Yokoya, Manabu Iwadate, Satoshi Suzuki, Takashi Matsuzuka, Noriko Setou, Tetsuya Ohira, Seiji Yasumura, Shinichi Suzuki, Hitoshi Ohto, Kenji Kamiya, Thyroid Ultrasound Examination Group
  • 雑誌名: Journal of Epidemiology 巻: 32(12) ページ: s23-s35
  • DOI: 10.2188/jea.JE20210271.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Revisiting the Geographical Distribution of Thyroid Cancer Incidence in Fukushima Prefecture: Analysis of Data From the Second- and Third-round Thyroid Ultrasound Examination (2022)
  • 著者名/発表者名: Tomoki Nakaya, Kunihiko Takahashi, Hideto Takahashi, Seiji Yasumura, Tetsuya Ohira, Hiroki Shimura, Satoru Suzuki, Satoshi Suzuki, Manabu Iwadate, Susumu Yokoya, Hitoshi Ohto, Kenji Kamiya
  • 雑誌名: Journal of Epidemiology 巻: 32(12) ページ: s76-s83
  • DOI: 10.2188/jea.JE20210165.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 甲状腺検査において明らかになっている甲状腺がん発症に関連している因子. (2023)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己
  • 学会等名: 2023年福島県立医科大学「県民健康調査」国際シンポジウム
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] 福島県県民健康調査「甲状腺検査」の震災後10年の歩みとこれまで明らかになった小児甲状腺への影響 (2022)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己
  • 学会等名: 第125回日本小児科学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 甲状腺結節に対するドプラエコーの有用性に関するFeasibility Study (2022)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己. 松本佳子, 岩舘学, 中野賢英, 國井葉, 福島光浩, 天野高志, 北川亘, 福成信博, 村上司, 宮川めぐみ, 貴田岡正史, 鈴木眞一
  • 学会等名: 第48回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 甲状腺内異所性胸腺の超音波所見と発見率 (2022)
  • 著者名/発表者名: 鈴木聡, 長嶺夏希, 関野瑞樹, 鈴木悟, 鈴木眞一, 志村浩己
  • 学会等名: 日本超音波医学会第95回学術集会
• [学会発表] 甲状腺検査二次検査における受診者・家族への心理社会的サポート～10年のあゆみ～ (2022)
  • 著者名/発表者名: 瀬藤乃理子, 鈴木悟, 志村浩己
  • 学会等名: 日本超音波医学会第95回学術集会
• [学会発表] JABTSの精査基準とATAガイドラインとの比較 (2022)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己
  • 学会等名: 日本超音波医学会第95回学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 甲状腺検査の10年の歩みと今後の課題 (2022)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己
  • 学会等名: 日本超音波医学会第95回学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] 肝臓におけるshear wave elastography および shear wave dispersionの臨床検査データとの関連性の解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 鈴木崇斗, 松田美津子, 佐藤ゆかり, 堀越由紀子, 山寺幸雄, 志村浩己
  • 学会等名: 日本超音波医学会第64回東北地方会学術集会
• [学会発表] 超音波画像の定量化によるファントム間差の検討と精度管理に及ぼす影響. (2022)
  • 著者名/発表者名: 高橋智里, 江尻遥香, 中畑那奈, 浅野眞比呂 長嶺夏希, 佐藤綾子, 鈴木聡, 鈴木悟 鈴木眞一, 志村浩己
  • 学会等名: 第49回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会
• [学会発表] 小児・青年期の甲状腺の横幅と厚さから算出された甲状腺面積の各性別、年齢、体表面積あたりの基準値について. (2022)
  • 著者名/発表者名: 江尻遥香, 鈴木悟, 浅野眞比呂, 中野那奈, 鈴木聡, 佐藤綾子, 長嶺夏希, 高橋智里, 山谷幸恵, 岩舘学, 松塚崇, 大平哲也, 安村誠司, 古谷文彦, 志村浩己, 鈴木眞一, 横谷進, 神谷研二.
  • 学会等名: 第49回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会
• [学会発表] 甲状腺穿刺吸引細胞診における検査前説明に関するアンケート調査結果. (2022)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己 福島光浩, 滝克己, 佐々木英司, 太田寿, 尾本きよか, 鈴木眞一, 中野恵一, 中野賢英, 松本佳子, 福成信博, 村上司, 宮川めぐみ, 貴田岡正史.
  • 学会等名: 第49回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] Current status of Thyroid Ultrasound Examination program and findings on the effects of radiation exposure on the thyroid gland in Fukushima. (2022)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Shimura.
  • 学会等名: Radiation Reseach Society 68th Annual International Meeting
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] 超音波検査において胃病変との鑑別に苦慮した肝腫瘤の一例. (2022)
  • 著者名/発表者名: 大橋ゆかり, 幕田倫子, 松田美津子, 山寺幸雄, 志村浩己.
  • 学会等名: 第53回福島医学検査学会
• [学会発表] ベプリジル抗不整脈薬によりTorsades de Pointesが誘発された一例. (2022)
  • 著者名/発表者名: 引地美由紀, 堀越由紀子, 佐藤ゆかり, 松田美津子, 山寺幸雄, 山田慎哉, 志村浩己.
  • 学会等名: 第53回福島医学検査学会
• [学会発表] 胆嚢癌の浸潤評価に超音波検査が有用であった一例. (2022)
  • 著者名/発表者名: 早川莉沙, 幕田倫子, 松田美津子, 山寺幸雄, 志村浩己.
  • 学会等名: 第53回福島医学検査学会
• [学会発表] 小児若年者における男女別甲状腺機能の変化について. (2022)
  • 著者名/発表者名: 鈴木聡, 岩舘学, 古屋文彦, 鈴木眞一, 横谷進, 鈴木悟, 志村浩己.
  • 学会等名: 第65回日本甲状腺学会学術集会
• [学会発表] 血液検査の効率化に向けた取り組みとその効果. (2022)
  • 著者名/発表者名: 遠藤武尊, 渡辺洋子, 菅野喜久子, 只野光彦, 嶋田有里, 佐々木義和, 山寺幸雄, 志村浩己.
  • 学会等名: 日本臨床衛星検査技師会 北日本支部医学検査学会（第10回）
• [学会発表] 急性白血病治療中に超音波検査で早期診断し得た真菌性肝膿瘍の１例. (2022)
  • 著者名/発表者名: 幕田倫子, 松田美津子, 結城莉沙 岡崎綾奈, 大橋ゆかり, 石橋伸治, 山寺幸雄, 志村浩己.
  • 学会等名: 日本臨床衛星検査技師会 北日本支部医学検査学会（第10回）
• [学会発表] 臨床検査医学領域における大学院教育. (2022)
  • 著者名/発表者名: 志村浩己
  • 学会等名: 第69回日本臨床検査医学会学術集会
  • 招待講演