研究課題
本研究においては,甲状腺癌の低侵襲術前遺伝子検査方法の確立とそれを加えたリスク評価法の確立を目的とし,穿刺吸引細胞診検体中微量DNAから甲状腺癌における変異遺伝子の検出方法を確立するとともに,新たな超音波検査技術である高感度血流評価や組織弾性評価法による超音波画像評価を加え,先進的な甲状腺癌診断およびリスク評価法を樹立することを目指している。倫理申請を行った上で,甲状腺腫瘍患者における臨床研究を開始している。その結果,Digital PCR法を用いることにより,穿刺吸引細胞診で検体作成後の穿刺針中に残存していた微量な細胞から抽出したDNAを用いて,術前遺伝子診断が可能であることを明らかにしている。これまで最も代表的な遺伝子変異であるBRAFV600E変異は,全検体の23%,乳頭癌症例の73%に検出された。また,臨床的リスクに関連するTERT遺伝子変異においては,C228T変異は13%,C250T変異は4%に認められた。さらに,これらの結果の検証として,BRAFV600E変異特異抗体による手術標本の免疫染色を実施し,結果を分析中である。また,微量検体からRNAを抽出し,cDNAを合成し,遺伝子転座型変異同定の検討を実施している。これらの遺伝子変異情報と臨床データの評価により,術前のリスク評価が可能であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Digital PCR法により,穿刺吸引細胞診で検体作成後の穿刺針中に残存していた微量な細胞から抽出したDNAを用いて,術前遺伝子診断が可能であることを明らかにしている。これまで254例の検体にについて検討を実施している。最も代表的な遺伝子変異であるBRAFV600E変異は,全検体の23%,乳頭癌症例の73%に検出された,臨床的リスクに関連するTERT遺伝子変異においては,C228T変異は13%,C250T変異は4%に認められた。さらに,これらの結果の検証として,BRAFV600E変異特異抗体による手術標本の免疫染色を実施している。また,現在,発見された遺伝子変異の遺伝子配列決定による結果の検証も行っている。
甲状腺腫瘍の穿刺吸引細胞診実施後の廃棄穿刺針の洗浄液を用いた遺伝子分析研究を,引き続き各患者から同意の下で継続する。また,得られたcDNAを用いた分析も開始する。これらの結果を,術後の組織診断および摘出組織の遺伝子検査結果と比較を行い,廃棄穿刺針を用いた遺伝子検査の性能評価を行う。さらに,上記研究を行った患者の超音波所見を,病理検査結果を明かさない状態で評価を行い(B-mode評価,血流評価,組織弾性評価),血液検査やCT検査などの他の検査結果および術後経過の情報とともに解析を行う。これらにより,甲状腺癌リスク評価の方法を探索する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (35件)
Endocrine Journal.
巻: 71(4) ページ: 383-393
10.1507/endocrj.EJ23-0609
Scientific Reports.
巻: 14(1) ページ: 5342.
10.1038/s41598-024-55916-7
the Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism.
巻: Online ahead of print. ページ: -
10.1210/clinem/dgae161
Japanese Journal of Infectious Diseases.
巻: 77(2) ページ: 68-74.
10.7883/yoken.JJID.2023.295.
The Journal of Radiation Research.
巻: 64(5) ページ: 761-768.
10.1093/jrr/rrad044
公衆衛生
巻: 87(11) ページ: 1103-1112.
10.11477/mf.1401210171
超音波TECHNO
巻: 35(3) ページ: 46-50
検査と技術
巻: 51 ページ: 570-572
10.11477/mf.1543208988