研究課題/領域番号 |
22K07489
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研究機関 | 高知学園大学 |
研究代表者 |
森本 徳仁 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (60398055)
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研究分担者 |
上岡 樹生 天理医療大学, 医療学部, 特別研究員 (00274374)
西田 愛恵 高知大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (30600796)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 口腔内常在菌 / 抗体 / 血小板凝集 |
研究実績の概要 |
口腔内には好気および嫌気環境下のもと多種にわたる微生物が生息しているが、一部の常在菌においては、生活習慣病、自己免疫疾患および大腸がん等の全身疾患の発症や進行リスクを高めることが明らかになってきている。また、冠動脈疾患では、主に連鎖球菌の有する血小板凝集能の関与も示唆されているが、宿主に常在している細菌群が生体にどのような機序により全身疾患を発症するかについては不明な点が多い。本研究では、自己の口腔内常在菌に対する宿主の免疫反応および血小板活性化がこれらの全身性疾患発症に関与していると仮定し解析を行なってきた。これまでに、成人5名の口腔内試料より常在菌を分離し、採血により得た血清および血小板多血漿を用いて解析を行なった。1人当たり36~50菌株の常在菌が分離された。これらの常在菌に対する抗体についてELISA法およびWestern Blot(以下、WB)による解析を行った。ELISA法は各菌蛋白を固相した自家製のELISA(以下、Ih-ELISA)プレートを作成し抗体スクリーニング法を確立した。Ih-ELISA法においてO.D.値が高値を示した常在菌は被験者1人当たり7~14菌種であった。これらの抗体プロファイルをWBにより解析した結果、低ー高分子の様々な常在菌抗原に反応する抗体を認めた。特に、Haemophilus属において低分子蛋白に対する抗体が検出された。また、同一菌種に対して宿主により反応性が大きく異なる菌種の存在としてもHaemophilus属が確認された。分離された菌種による血小板活性化の一つとして血小板凝集能を観察した結果、分離された菌のうちStreptococcus anginosusおよびFusobacterium nucleatumにおいて強い血小板凝集が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4および 5年度までの研究スケジュールとして常在菌の分離・同定、常在菌に対する抗体の検索、血小板凝集およびサイトカイン測定を計画しており、これらの研究についてはいずれも現在順調に進行している。これらまでに分離した細菌および血清は全て保存しており、今後の研究にも引き続き使用する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はさらに被験者数を増加して上記計画を進める予定である。これまでの結果から、被験者一人当たりからおよそ50菌種の常在菌が分離されており、今後対象となる被験者においても多種の菌が分離されることが予想される。このことから、WB等の煩雑な手技が必要となる手法では、申請者らが考案したIh-ELISAによる常在菌に対する抗体スクリーニングを行ったのち、本法で高値を示したサンプルを中心として解析を進める。一方、血小板との結合性や活性化に関する解析では、抗体を介さない可能性も示唆されるため全菌株を対象として血小板凝集能、Native PAGEおよび二次元電気泳動法などの手法を用いて解析を行う。また、菌抗原の細胞刺激による血小板活性化因子の放出等の解析に関しては、全血に菌抗原を添加し、細胞刺激を行ったのち上清を回収し、血小板活性化因子(P-selectin、PAF等)をELISA法あるいはフローサイトメトリー法等を用いて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
血小板活性化に関する試薬について、該当する可能性を有する因子を解析する試薬が絞り込めていなかったため、この分が次年度使用額として生じた。次年度には上記試薬を決定し購入する予定である。
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