研究実績の概要 |
自己免疫性神経炎症疾患である視神経脊髄炎(NMOSD)や抗MOG抗体関連疾患は、標的分子に対する自己抗体による中枢神経系内での細胞障害が主な原因である。しかし、標的分子は血液脳関門(blood-brain barrier; BBB)を隔てた中枢神経系に発現しており、BBBを通過することのできない自己抗体がどのようにBBBを通過し標的分子を攻撃するのかという分子病態が不明であった。本研究では、我々が10年の歳月をかけて完成させた血液脳関門(BBB)を構成する3種類の主要構成ヒト細胞株を用いたin vitro BBBマルチ培養モデル(国内・海外特許申請済)と、自己免疫性神経炎症疾患の個別患者IgGを用いて、IgGの中枢移行を促進する血管内皮細胞の膜蛋白の標的抗原分子を同定し、抗体治療薬の脳内輸送をコントロールできる治療薬の開発を目的とした。 昨年度は、当初の予定通り、各20名のNMOSD,抗MOG抗体陽性関連疾患患者のIgGをIn vitroモデルに作用させ、IgGの中枢移行を誘導する検体を複数選定した。さらに、血管内皮細胞株の膜蛋白と選定した患者IgGとで免疫沈降を行い、質量分析解析を行い、健常者群と比較し特異的な発現がみられた膜蛋白を標的抗原候補として同定した。 本年度は、同定した分子に対する市販抗体を複数準備し、市販抗体を作用させることで同様のIgGの移行が再現できるかを確認した。さらに、エンドソームマーカーを用いて、亢進したIgG輸送がエンドソームによるtranscellularによるものであることを明らかにした。
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