研究課題/領域番号 |
22K07497
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
杉江 和馬 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60347549)
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研究分担者 |
西野 一三 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第一部, 部長 (00332388)
山下 賢 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学成田病院, 教授 (20457592)
森 英一朗 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70803659)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Danon病 / オートファジー / 相分離 / LAMP-2 / リソソーム |
研究実績の概要 |
オートファジー異常を来す神経筋疾患の代表的疾患であるDanon病は、リソソーム膜蛋白であるLAMP-2欠損症で、ミオパチーと致死性心筋症を呈する治療未確立の予後不良な疾患である。原発性リソソーム機能異常からオートファジー機構の異常を来す。LAMP-2欠損ではG3BP1(Ras GTPase-activating protein-binding proteins 1)を介したmTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)のオートファジー制御シグナルに異常をきたすことが知られているが、その機序は明らかでない。オートファジーと相分離が多様な疾患発症に関与することを踏まえ、オートファジーでのLAMP-2複合体の形成機序とその制御破綻について解明を目指した。 2022年度は、分子レベルでのオートファジー異常の解析として、LAMP-2複合体の構成因子の分子間相互作用の生化学的評価を行った。LAMP-2Bフラグメントのコンストラクトを設計し、大腸菌BL21(DE)株で誘導発現し目的蛋白質を精製した。さらに、プルダウンアッセイや共免疫沈降法を用いて、LAMP-2複合体の構成因子の分子間相互作用を生化学的に評価した。近接依存性標識法でLAMP-2の相互作用因子の分析も行った。結果として、LAMP-2とG3BP1の直接的な相互作用は確認できず、LAMP-2複合体への他因子の関与が示唆された。一方、近接依存性標識法では細胞内でLAMP-2に近接するビオチン化蛋白が確認でき、オートファジー制御に関与する複合体構成因子が含まれる可能性が考慮された。本結果からは、相分離因子であるG3BP1とLAMP-2の相互作用は確認できなかったが、オートファジー制御に関与するLAMP-2複合体構成因子の存在を指摘できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに研究実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、細胞レベルでのLAMP-2の発現解析と相分離制御へのオートファジーの関与について解析を行う予定である。C9orf72遺伝子の異常伸長リピートをもつALSにおいて、RAN翻訳で生じる毒性ペプチドは相分離制御機構を破綻させるが、本研究では毒性ペプチドとオートファジー機構の関係について細胞レベルでの解析を行い、オートファジー異常のメカニズムを明らかにする。毒性ペプチドを発現するコンストラクトを導入した細胞について、LysoTrackerによるリソソームの標識や、オートファジー関連因子による免疫組織学的染色の他、細胞基質内とオートファゴソーム膜上に存在するオートファゴソームのマーカーであるLC3をウエスタンブロット法により検出、分析する。さらに、オートファジー誘導因子や抑制因子を添加することにより、それぞれの影響を観察して、オートファジー経路のどこに対して毒性ペプチドが働きかけるかを明らかにし、得られた知見を翌年度の評価と連動させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主に分子レベルでのオートファジー異常に関する研究を行ったが、順調に研究は進み、予定より消耗品費の使用が少なく、またコロナ禍のため出張がオンラインとなったものも多く、来年度以降の細胞および組織レベルでのオートファジー異常に関する研究およびその発表機会に充填して成果を出していく予定である。
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