研究課題/領域番号 |
22K07505
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
清水 優子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20246507)
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研究分担者 |
池口 亮太郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30731731)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 視神経脊髄炎 / 合併妊娠 / 再発予防 / バイオマーカ |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、中枢神経系自己免疫疾患で、再発により身体機能障害や高次脳機能障害が進行し、著しいQOL低下をきたす。両疾患ともに妊娠可能な年齢の女性に好発する。MS/NMOSD合併妊産婦の再発リスクは産褥期に最も高くなり、この時期の再発は予後不良因子となる。したがって妊娠産褥期の再発を低下させることは良好な長期予後に直結する。本研究の目的は、疾患活動性バイオマーカーを、MS/NMOSDのプレコンセプション・妊娠中・産褥期に測定し、MS/NMOSD合併妊娠患者の疾患活動性を評価することによって、産褥期の再発を予防し、長期予後を改善することである。2022年度は、MSの再発、身体機能障害との関連性が示唆されている上記バイオマーカーについて、MSの妊娠・出産期の疾患活動性との関連性を検討した。測定時期は、妊娠前・妊娠中・出産後、妊娠出産に伴う再発時である。利用する研究対象者の診療情報は,妊娠年齢、疾患修飾薬の治療の有無、妊娠出産と新生児の転機である。バイオマーカとしてフローサイトメータ法を用い末梢血Treg(CD4+CD25+CD127±)、血漿中NfL(SIMOA法)、血漿中OPN(ELISA法)を測定した。2022年の対象はMS合併妊産婦13例でありNMOSD合妊産婦の症例はなかった。結果:母子ともに妊娠・出産に伴う有害事象はなく、新生児の先天異常はなかった。妊娠前、妊娠中、出産後、再発時の血漿中OPNとNfLは、妊娠前と比較し、出産後早期のPP1において有意に高値を示した(p<0.05)。Treg は妊娠前、妊娠中(平均値:8.41~9.94%)と比較し、出産後と再発時に平均値は低値(平均値:7.72~7.72%)を示していたが統計的有意差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究対象は2018年1月から2022年3月まで当科通院加療中の多発性硬化症(MS)合併妊産婦13例で、平均年齢は32歳±3.5歳、妊娠16例である。うち3例で出産後早期の再発を認めた。全例、妊娠前に疾患修飾薬による治療を行っており、グラチラマー酢酸塩以外は妊娠判明時に治療を中止した。母子ともに妊娠・出産に伴う有害事象はなく、新生児の先天異常はなかった。妊娠前、妊娠中、出産後、relapse時の血漿中OPNとNfLは、妊娠前と比較し、出産後早期のPP1において有意に高値を示した(p<0.05)。Treg は妊娠前、妊娠中(平均値:8.41~9.94%)と比較し、出産後と再発時に平均値は低値(平均値:7.72~7.72%)示していたが統計的有意差はなかった。結論:今回の研究結果から、血漿中NfLとOPNは、MS合併妊娠において再発のリスクとなるPP1に有意に高値を示したことから疾患活動性を反映するバイオマーカとなる可能性が示唆されたことから概ね想計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究結果から、血漿中NfLとOPNは、MS合併妊娠において再発のリスクとなる出産早期のPP1に有意に高値を示したことから疾患活動性を反映するバイオマーカとなる可能性が示唆された。しかし少数例における結果であり、症例を蓄積し、検討を継続する必要がある。また2022年の対象がMS合併妊産婦のみであったため、次年度以降はNMOSD合併妊産婦の対象をくわえることが目標である。疾患活動性を反映するバイオマーカを駆使し、合併妊娠に伴う再発予防が可能になれば、患者の長期予後改善、QOLの向上や医療資源の適正な分配に貢献できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
末梢血を採取しリンパ球Th1/Th2関連性ケモカインはフローサイトメータ、血漿OPNはELISA法を用い解析する。本研究は介入のない後ろ向き、および前向き臨床研究である。再発時においてEDSS、MRI、sNfLを含む血中バイオマーカーを測定するため次年度使用額が生じた。
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