研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明、治療法開発のために病態関連遺伝子を明らかにする必要がある。我々はこれまでゲノムワイド関連解析(GWAS)や次世代シークエンサーを用いてALS関連遺伝子の探索を行ってきたが、いまだに不明なままの部分が多く残されており、ALSにおけるmissing heritabilityと考えられている。本研究では、大規模ALS患者コホート等から収集した多数のALS患者のDNA検体や全ゲノム解析データ及び縦断的臨床像を用いて、リピート伸長を含む構造多型の網羅的解析を行い、それらの変異とALSとの関連を明らかにすることを目的に研究を計画した。孤発性ALS患者1,077例、健常コントロール3,209例の全ゲノム解析データを解析し、既知のALS関連遺伝子であるC9orf72遺伝子を含め、5つの遺伝子に病原性が疑われるリピート伸長変異を認めた。また、既知の脊髄小脳変性症原因遺伝子のリピート伸長変異を複数の症例に認めており、Nanopore Sequencerによるロングリードシーケンスを行い、正確なリピート数を確認することを計画している。また、孤発性ALS 1,076例の網羅的遺伝子解析データを用いて、ALSの生存期間に影響する遺伝子多型を複数同定し、患者由来のiPS細胞を用いて運動ニューロンを作成し、病態を再現した。それらの成果をまとめ、令和4年3月の時点で論文投稿中である。
3: やや遅れている
COVID-19の流行により、試薬や物品の調達に遅れが生じ、想定よりも遺伝子解析が進んでいない。また、研究室内でのCOVID-19の流行及び研究代表者のCOVID-19感染により、実験や研究が行えない期間が計2ヶ月程あった。
720例の全ゲノム解析データが未解析であり、ExpansionHunterなどを用いてそれらの構造多型の有無を探索し、新たなリピート伸長変異がないか、これまでに同定した構造多型がさらにないか探索していく。同定した構造多型を持つ症例の病理組織の探索、症例由来のiPS細胞から分化させた運動ニューロンの発現などを探索していく予定である。また、生存期間に影響する遺伝子多型を同定したため、その遺伝子多型の周辺に影響する構造多型がないか探索していく予定である。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響をうけ、国際学会、国内の学会の多くがウェブ開催となった。そのため、他の研究者との議論や情報交換もできなかった。また、予定していたサイトライセンス使用料を別の研究費で賄うことができた。令和4年度は研究室内でのCOVID-19の流行、また、研究代表者や家族のCOVID-19感染により、実験や研究が行えない期間が計2ヶ月程あり、想定していたよりも研究が進まず、試薬の使用量も少なかった。今年度は実験試薬の購入や論文執筆、投稿に必要な費用に充当する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
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