研究課題
本研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連する、SCA8の原因遺伝子ATXN8OS/ATXN8、SCA2の原因遺伝子ATXN2、未発表の遺伝子Xの反復配列を有するALS患者由来の運動ニューロン(iMN)モデルを確立して、病理組織での確認を行いつつ、治療法開発を行う。1.病理的にALSと確認されている患者の遺伝子発現プロファイル:本年度は、SCA8原因遺伝子異常例のiMNで網羅的に、alternative splicingの変化が生じるかを正常iMNと比較してマイクロアレイ(ClariomD)にて検索した。その結果、ALSの原因になりうるDynactin-1のスプライス異常が疑われた。特異的プライマーを用いたRT-PCRでは、残念ながら明らかな異常は検出できなかった。一方、ALSに関連する遺伝子Yの発現は亢進していた。2. iMNの染色とRAN翻訳確認:SCA8遺伝子異常陽性剖検小脳では、異常なRNA凝集(RNA foci)が生じる。SCA8の患者iMNに、蛍光標識したリピートのプローブを用いて、RNA fociを検出を試みた。この結果、RNA fociが細胞質に検出された。RAN翻訳として病的意義が知られている抗ポリグルタミン特異的抗体1C2で、免疫染色を行う。また、その他のポリアミノ酸あるいは、それに続くアミノ酸配列に対するポリクローナル抗体を作成したが、免疫染色を行った。その結果、SCA8患者由来iMNで2種のRAN翻訳蛋白が細胞質内に凝集していることが判明した。3.iMNへの治療介入:形態変化に加えて細胞生存率、免疫染色を指標として、実験的治療を行う。SCA8原因遺伝子発現量低下を目標に、3種類のsiRNAによる、遺伝子発現抑制ができるかを検討した。形態変化として、軸索が縮小していることが判明した。生存率は有意に増加した。
2: おおむね順調に進展している
患者iPS細胞から誘導した運動ニューロンについてその性質を調べ、細胞生存率が低いこと、その軸索が短縮することなどが判明し、細胞モデルとして使用できる可能性を発見した。さらに、RAN翻訳蛋白に対する抗体を作製して、免疫染色が可能となっており、治療指標になることを示した。
今後、SCA8関連のみならず、その他のSCA2あるいは未発表遺伝子Xに関連する細胞モデルの構築と、治療研究を行っていく。さらに、それらモデルにおける細胞の形態変化、細胞生存率、遺伝子発現プロファイルを確認する。さらにRAN翻訳関連蛋白への抗体を新たに作製して、患者iMNあるいは、組織で染色をおこなっていく。
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Neuroscience Research
巻: 180 ページ: 83~89
10.1016/j.neures.2022.03.002
Neuromuscular Disorders
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