研究課題
本研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する、遺伝子のリピート配列伸長が病因となるSCA8の原因遺伝子ATXN8OS/ATXN8、SCA2の原因遺伝子ATXN2、未発表の遺伝子Xの反復配列を有するALS患者由来の運動ニューロン(iMN)モデルを確立して、病理組織での確認を行いつつ、治療法開発を行う。患者由来iPS細胞の樹立に関しては、SCA8原因遺伝子変異陽性ALSのiPS細胞を樹立し、さらに運動ニューロン(iMN)への分化も成功した。さらに、この患者由来iMNでは軸索の伸長が不十分であり、細胞死も増加した。また、SCA2の中間長を有する患者や、遺伝子Xのリピート異常伸長を有する線維芽細胞も樹立しており、iPS細胞への誘導を行った。SCA8関連iMNにおいて、異常伸長RNA fociとRAN翻訳の検出を行い、どちらも検出された。特に、リン酸化TDP43と異常伸長したRNA fociとの共在が判明した。患者病理組織に関しては、SCA8関連ALSの剖検脊髄において、これまで報告のなかったRAN翻訳蛋白の凝集が検出された。iMNにおいて、形態変化や免疫染色をマーカーとして、siRNAによる実験的治療を行った。この結果、SCA8関連iMNでは、細胞死の抑制が観察された。以上から、このiMNは疾患の細胞モデルとして使用できると考えられる。このように本研究では、SCA8関連ALSの治療方法を探索できる系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
SCA8関連ALSについては、細胞モデルの確立が終了し、治療実験も行っている点から、予定よりも、早いペースで研究が進んでいる。また、実験的治療方針に関しては、遺伝子発現抑制を行う方向で決定した。一方、SCA2や遺伝子Xに関しては、iMNの確立がまだであるため、少し予定よりも遅れている。全体としては、順調な進捗状況と考えられる。
SCA8関連iMNでは、細胞死の抑制が観察されたが、さらにそれがRNA fociの抑制によるのか、RAN翻訳低下によるのかを検討する。SCA2の中間長を有する患者や遺伝子Xの異常伸長を有する線維芽細胞も樹立しており、iPS細胞が作製された。核型解析にて異常が無いことが確認され次第、SCA8と同様にiMN誘導、治療実験に移行する。
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Scientific Reports
巻: 13 ページ: 17801
10.1038/s41598-023-45011-8