研究課題
パーキンソン病において、血管リスクが発症リスクを減らすという疫学データがあり、その現象の分子メカニズムを理解するために、マウスモデルを用いた実験を行った。シヌクレインの線維状態をマウスの脳内に注入し、マイクロコイルを用いて総頸動脈を狭窄させることで、シヌクレイン病理の改善が確認された。この結果をもとに、マイクロコイルを用いた総頸動脈狭窄の影響を調べるために、神経細胞特異的なエピゲノム解析を行った。孤発性神経変性疾患は遺伝的背景と後天的要因が複雑に関連し合って病態を形成しているため、エピゲノム変化から病態を理解することが重要である。従来の脳全体を用いたエピゲノム解析では、個々の細胞における変化への感度が乏しいという問題点があった。そこで、本研究では、神経細胞特異的なATAC-seq解析を行い、ゲノムワイドに起きている現象を明らかにすることを目的とした。解析の結果、マイクロコイルを用いた総頸動脈狭窄がHIF1Aを介して神経細胞のエピゲノム状態に影響を与え、HIF1A依存的オートファジーを誘導することでシヌクレイン病理を改善する可能性が示唆された。この結果は、血管リスクがパーキンソン病の発症リスクを減らすメカニズムの一端を説明するものであり、孤発性神経変性疾患の病態理解に役立つと考えられる。今後は、HIF1A依存的オートファジーの詳細なメカニズムを解明し、パーキンソン病の新たな治療戦略の開発につなげていきたい。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は、当初の計画通りに順調に進展している。前年度までに確立したマウスモデルを用いて、本年度は神経細胞特異的なエピゲノム解析を行った。その結果、マイクロコイルを用いた総頸動脈狭窄がHIF1Aを介してシヌクレイン病理を改善する可能性が示唆された。この成果は、血管リスクがパーキンソン病の発症リスクを減らすメカニズムの一端を説明するものであり、孤発性神経変性疾患の病態理解に役立つと考えられる。現在までの進捗状況は、当初の計画通りであり、順調に研究が進んでいる。
今後は、HIF1A依存的オートファジーの詳細なメカニズムを解明するため、さらなる検討を行う予定である。具体的には、HIF1Aによるオートファジー関連遺伝子の発現制御や、オートファジーの活性化がシヌクレイン病理の改善にどのように寄与しているかを明らかにする。また、モデルマウスを用いたシングルセル解析を行い、総頸動脈狭窄の影響を受けた神経細胞の特性を詳細に解析する。これにより、血管リスクがパーキンソン病の発症リスクを減らすメカニズムをより深く理解することができると期待される。これらの研究を通じて、パーキンソン病の新たな治療戦略の開発につなげていく。
調達の方法を工夫することで当初計画より経費を節約できた
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FASEB journal : official publication of the Federation of American Societies for Experimental Biology
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