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2022 年度 実施状況報告書

グリア性炎症を惹起するカルシウム結合蛋白による筋萎縮性側索硬化症の発症起源の同定

研究課題

研究課題/領域番号 22K07517
研究機関九州大学

研究代表者

林 信太郎  九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90312876)

研究分担者 山崎 亮  九州大学, 医学研究院, 准教授 (10467946)
小早川 優子  九州大学, 大学病院, 助教 (40733788)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード培養ミクログリア / カルレチニン / カルビンディン / パルブアルブミン / MCP1 / CCL2 / グリア性炎症惹起性
研究実績の概要

①研究計画書に基づき、カルシウム結合蛋白 (カルビンディン, CB; カルレチニン, CR; パルブアルブミン, PV)によるグリア性炎症惹起性の検証を以下の方法で行った。マウス株化ミクログリア6-3細胞 (COSMO BIO Co.LTD)を96ウェルプレートに播種した後、培養液にエンドトキシンフリーであることを確認したリコンビナント蛋白、CB、CR、PV (0, 1, 10, 100 nM)を添加しday1-3の各培養上清に含まれる17種類のケモカイン/サイトカイン(CXCL1, GM-CSF, IFNγ, IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-9, IL-10, IL-12p70, IL-13, IL-17A, MCP1, MIP1a, MIP1b, TNF-α)をFirePlex-96 Key Cytokines (Mouse)Immunoassay panel (Abcam, ab235656)で測定した。測定前に各dayにおいて細胞をパラフォルムアルデヒド固定しクリスタルバイオレット染色を行い、細胞の生存を確認した。この結果、測定した全項目の中で100 nM、day3のCR添加群においてMCP1の有意な増加を認めた (測定値は②に示す(pg/ml)。両側t検定;無添加群 vs. 100 nM: p=0.040, 1 nM vs. 100 nM: p=0.033, 10 nM vs. 100 nM: p=0.045)。残り16項目のケモカイン/サイトカインについて有意な変動はなかった。 CB、PV添加群では一部の検体で測定値が得られたがばらつきが大きく判定不可とした。
②(無添加群)118.4±21.8, (1nM)177.6±20.9, (10nM)190.0±25.1, (100nM)328.5±79.2

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CB、CR、PVの単独添加によるグリア性炎症惹起性の検証を遂行できた。現段階で左記3種類のカルシウム結合蛋白のうち2種類を組合わせての同時添加実験、3種類を全て組合わせた同時添加実験は未施行であるが、実験方法は確立しているので時宜により円滑に施行可能である。

今後の研究の推進方策

1) 今回選んだCB、CR、PVはいずれもヒト正常脊髄前・側索を走行する軸索に存在が確認されているカルシウム結合蛋白である。ALSでは同領域の軸索変性が指摘されているので、今回培養ミクログリアからMCP1を産生させたCRがグリア性炎症を惹起するとの我々の仮説の信頼性を高めるために、他の軸索蛋白では同反応が見られないことを示す必要がある。このために代表的な軸索蛋白であるニューロフィラメントを添加した実験を施行する。
2) 研究計画書に基づき、2年度目はヒト脳脊髄液中のCB、CR、PV各濃度とケモカイン/サイトカイン濃度との相関関係の検証、マウス脳室内への蛍光標識カルシウム結合蛋白投与実験へと進む。

次年度使用額が生じた理由

理由:研究計画の一部であるマウス脳室内へのカルシウム結合蛋白投与実験について、投与蛋白群に蛍光標識をする行程のみならず、使用するカラムなど消耗品の全てをエンドトキシンを含まない状態にする必要があり(エンドトキシンが含まれていると脳室内投与自体が上手くいっても、動物がショック死を起こす可能性がある)、これらに対する費用が当初の予定と異なり当該年度に受領した経費を上回ってしまうことが判明した。このため当該年度の予算を次年度に繰り越し合算することにより、当実験に必要な予算を調達する計画に変更した。一方、この場合に当該年度については研究計画書に記した実験をほとんど行えなくなってしまうので、これを回避するために方策を講じた結果、教室が保存している培養ミクログリアとELISAキット、リコンビナント蛋白の供与を受ければ実験の遂行が可能であることが分かった。この方策によって現状で可能な実験を遂行し得たのみでなく、次年度に繋がる結果まで出すことが出来た。
使用計画:ヒト脳脊髄液中のカルシウム結合蛋白濃度やケモカイン/サイトカイン濃度測定のためのELISAキット、それに関する試薬の購入、マウス脳室内へのカルシウム結合蛋白投与実験のためのマウス、投与ペプチドや手術器具の購入、エンドトキシンフリー化処置、免疫染色のための試薬や抗体、培養実験のための培地の購入のために費用を用いる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Distinct effects among calcium-binding proteins for microglia to produce chemokines associated with the clinical severity of ALS.2023

    • 著者名/発表者名
      Hayashi S, Yamasaki R, Kira JI, Isobe N.
    • 雑誌名

      Clin Exp Neuroimmunol

      巻: 14 ページ: -

    • DOI

      10.1111/cen3.12738

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The first evaluation of calretinin in the spinal axons encompassed in anterolateral funiculi outside the cortical tract and cerebrospinal fluids of ALS patients.2022

    • 著者名/発表者名
      Hayashi S, Yamasaki R, Kobayakawa Y, Kira JI, Isobe N.
    • 雑誌名

      Amyotroph Lateral Scler Frontotemporal Degener

      巻: 23 ページ: 101-102

    • DOI

      10.1080/21678421.2022.2120682

    • 査読あり
  • [学会発表] The first evaluation of calretinin in the spinal axons and cerebrospinal fluids of ALS patients.2022

    • 著者名/発表者名
      Hayashi S, Yamasaki R, Kobayakawa Y, Kira JI, Isobe N.
    • 学会等名
      第63回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] カルシウム結合蛋白に着目したミクログリアからの 筋萎縮性側索硬化症重症度関連ケモカイン放出因子の解明.2022

    • 著者名/発表者名
      林信太郎、山﨑亮、吉良潤一、磯部紀子.
    • 学会等名
      第34回日本神経免疫学会学術集会
  • [学会発表] The first evaluation of calretinin in the spinal axons encompassed in anterolateral funiculi outside the cortical tract and cerebrospinal fluids of ALS patients.2022

    • 著者名/発表者名
      Hayashi S, Yamasaki R, Kobayakawa Y, Kira JI, Isobe N.
    • 学会等名
      33rd International Symposium on ALS/MND
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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