研究課題/領域番号 |
22K07523
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
横田 睦美 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (10647415)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | PRKN変異 / TH-GFP iPS細胞 / ドーパミン神経細胞 / 近接ライゲーションアッセイ |
研究実績の概要 |
本研究ではiPS細胞由来ドーパミン神経細胞をGFP標識することによりドーパミン神経特異的なミトコンドリア機能・形態解析を可能にし、パーキンソン病におけるドーパミン神経特異的なオルガネラの構造変化や変性機序を見出すことを主目的としている。 本研究ではこれまでに樹立したドーパミン神経マーカーTyrosine Hydroxylase(TH)遺伝子にGFP遺伝子をノックインした健常者及びPRKN変異患者TH-GFP iPS細胞株を用いている。TH-GFP iPS細胞由来GFP陽性ドーパミン神経細胞のトランスクリプトーム解析からミトコンドリアと小胞体の接触部位(ERMCS)に着目した。GFP陽性ドーパミン神経細胞の光顕電顕相関観察と近接ライゲーションアッセイの結果、PRKN変異患者においてERMCSの減少が認められ、ミトコンドリアストレスCCCP処理によりさらにERMCSが減少することが明らかになった。TH-GFP iPS細胞とは別のPRKN変異患者iPS細胞由来ドーパミン神経細胞においても近接ライゲーションアッセイを行ったところ同様の傾向が認められた。また、小胞体からミトコンドリアへのカルシウムイオン流入について解析するため、GFP陽性ドーパミン神経細胞においてレンチウイルスを介してCEPIA3mtを発現させ、ヒスタミン刺激によるCEPIA3mtの蛍光強度変化を測定した。その結果、患者ドーパミン神経細胞においてヒスタミン刺激によるミトコンドリアへのカルシウムイオン流入が減少していることも明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TH-GFP iPS細胞を利用した光顕電顕相関観察やミトコンドリアカルシウムイメージングにより、小胞体とミトコンドリアの接触部位がPRKN変異患者において減少していることを形態的・機能的に示すことができ、今回の研究結果は重要な進展であった。これまでの研究により樹立したTH-GFP iPS細胞を用いることでドーパミン神経細胞特異的なオルガネラの形態学的解析やライブイメージングが可能となっており、今回初めて、PRKN変異ドーパミン神経細胞におけるミトコンドリアカルシウムイメージングを行った。パーキンソン病におけるミトコンドリアと小胞体の接触部位の変化については増加と減少の両方の報告があるが、今回の研究によりPRKN変異患者ドーパミン神経細胞において接触部位が減少しているという結果が得られた。ミトコンドリアと小胞体の接触部位に対するアゴニストによるPRKN変異患者ドーパミン神経細胞死への影響を検証することにより、パーキンソン病患者ドーパミン神経細胞死との関連を明らかにできる可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
ドーパミン神経細胞死におけるERMCSの意義について明らかにするため、PRKN変異患者TH-GFP iPS細胞由来ドーパミン神経細胞に対するERMCSタンパク質アゴニスト(PRE-084)処理を行う。PRE-084処理に伴うミトコンドリアカルシウム濃度変化、ミトコンドリア機能変化、細胞質のカルシウム濃度変化、細胞死抑制効果をそれぞれCEPIA3mt発現、TMRM染色、Fura 2-AM染色、cleaved caspase-3染色により評価する。これらの解析により、PRKN変異患者におけるERMCSの減少とドーパミン神経細胞変性との関連解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は基本的にはTH-GFP iPS細胞4株を用いて解析を行ったので使用額が抑えられたが、次年度は解析に用いるiPS細胞株数を増やして検証を行うため、次年度使用額は培養関連試薬に当てる。
|