研究実績の概要 |
実験計画に従い IgA 抗体増加試験として、腸内細菌の一種である Alcaligenes faecalis 由来のリポ多糖 (LPS) を、多発性硬化症のウイルス感染マウスモデルであるタイラーウイルス感染マウスに投与し、その影響を解析した。LPS 投与マウスと非投与マウスで体重変化や臨床経過、中枢神経系における病変などに有意な差は見られなかったが、糞便を採取し腸内細菌叢を解析した結果、Alistipes 属菌が LPS 投与マウスで増加していた。Alistipes 属菌がなぜ増加したのかについては、今後明らかにしていければと考えている。また、LPS はアジュバント効果が報告されており、アジュバント自体が腸内細菌叢に影響するかを調べるために、アジュバントとして頻用されている完全フロイントアジュバントをマウスに投与し、腸内細菌叢を解析した。その結果、アジュバントのみの投与で腸内細菌叢が変化しうることを明らかにした。これらのデータをまとめ、論文として投稿した (Omura S, Khadka S, et al., Int J Mol Sci, 2023)。 IgA 枯渇試験を行うため、IgA 遺伝子を欠失させた IgA ノックアウト(KO) マウス、およびタモキシフェン投与により IgA 遺伝子発現を抑制できるコンディショナルノックアウトマウスを作製し、系統の確立を行った。予備実験としてIgA KOマウスを用いて実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE) を誘導すると、EAE の症状悪化が観察された。また、、タイラーウイルス感染マウスにおいて IgA に結合する腸内細菌を同定するために、IgA シーケンシングの確立を目指し、予備実験を行った。データは解析中である。 また、本研究に応用できるデータ解析手法として、医科学ビッグデータに対する因子分析の手法を確立し、論文として発表した。
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