研究課題
副腎白質ジストロフィーは、同一家系内でも多彩な臨床病型を示すのが特徴である。その中で、小児、思春期、成人大脳型は大脳白質の炎症性脱髄の急速な進行するため、予後不良である。大脳型に対しては、発症早期の造血幹細胞移植が、症状の進行停止に有効である。多彩な臨床病型を規定する因子を同定することができれば、臨床上有用である。Exome data解析として、極長鎖飽和脂肪酸アシルCoAの代謝に関わる遺伝子群を表現型修飾因子の候補遺伝子群として、exome dataの解析を行っている。極長鎖脂肪酸アシルCoAの代謝に関わる遺伝子群のvariantsを抽出し、Loss of functionを来す変異、既知の遺伝子変異の抽出、また、コントロールデータベースに基づいたvariantsの頻度、variantsの機能予測アルゴリズムのスコアを考慮してvariantの抽出を行っている。さらに副腎白質ジストロフィー症例のDNAを収集している。また、造血幹細胞移植前後の副腎白質ジストロフィー症例の神経所見、画像、生理検査のデータの蓄積がなされている。また、移植前だけでなく、移植後のDNAの採取も行っており、移植後のキメリズム解析も検討し、移植後のキメリズムの違いが、移植後の神経症状に影響を与えるかの検討も行っている。モデルマウスの解析として、Abcd1ノックアウトマウス(Abcd1-/Y)に、Abcd1と同様にペルオキシソーム膜上で機能し、極長鎖脂肪酸CoAのペルオキシソームへの輸送に関わる遺伝子Acbd5ノックアウトマウスを、IVF-ETの技術を用いて作出し、Abcd1 ノックアウトマウス(Abcd1-/Y)とのかけ合わせを行っている。
2: おおむね順調に進展している
Exome解析を順調に進めており、副腎白質ジストロフィーのDNA検体も増えている。また、マウスのかけ合わせも順調に進んでいる。極長鎖脂肪酸CoAのペルオキシソームへの輸送に関わる遺伝子Acbd5ノックアウトマウスとAbcd1 ノックアウトマウス(Abcd1-/Y)をかけ合わせたマウスで、Abcd1ノックアウトマウスとの表現型の違いを観察する。
今後、極長鎖飽和脂肪酸アシルCoAの代謝に関わる遺伝子群を表現型修飾因子の候補遺伝子群として、exome dataのさらなる解析を行っていく。
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