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2022 年度 実施状況報告書

ALS発症におけるOPTNの新規核内機能:スプライソソーム異常と凝集体形成

研究課題

研究課題/領域番号 22K07535
研究機関浜松医科大学

研究代表者

大坪 正史  浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 助教 (10327653)

研究分担者 長島 優  浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (20635586)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードALS / FUS / OPTN / granule / spliceosome
研究実績の概要

OPTN部分欠失体Lc2ndが培養細胞の核内でスプライソソーム複合体の蛋白と結合し、この中にALS原因遺伝子FUSも同定されたことから、核内OPTNの核内局在の意義とALS発症メカニズムを、FUS機能の修飾(促進あるいは抑制)とする視点で検討をおこなった。
1)核内機能の追究:HeLaS3細胞および、OPTN正常遺伝子、部分欠失体Lc2ndを安定発現する細胞からcDNAライブラリーを作成した。FUSにより選択的スプライシングを受ける遺伝子をターゲットとして、特異的プライマーでPCRを行ない、MAPTでは、Ex10を含み4個の微小管結合配列を持つ4Repeat-tau(4RT)と、これを含まない3Repeat-tauに相当するバンドを得た。Lc2ndの場合にのみ、4RTバンドの強度が増加した。他に、複数の選択的スプライシングが変わる遺伝子が存在した。また、FUSにより発現制御をうけるLong pre-mRNAのいくつかの発現をみとめた。
2)凝集体形成へのOPTNの寄与の検討:GFP融合FUS遺伝子プラスミドと患者で発見されている変異を導入した改変プラスミドを、HeLaS3細胞および,OPTN,Lc2nd発現細胞株へ遺伝子導入し、24時間後に細胞質凝集体を観察した。Gly-richドメイン、核局在シグナルの変異を用いた。Lc2nd発現細胞では、複数の変異に細胞質凝集体の増加が見られた。
3)ALS発症時のOPTNの核局在の実証:酸化ストレス刺激により、正常OPTNの核移行をみとめ、核移行のキーとなる刺激を得た。また、Lc2ndが欠失している領域を発現させることで、内在OPTNの核移行を示す結果から、この領域に応答性因子が結合すると推測する。
今回、核内局在を示すOPTN短縮体Lc2ndが、FUS欠損の場合の選択的スプライシングを模倣し、また、変異FUSで見られる細胞質凝集体形成を促進するという結果を得た。すなわち、核内OPTNは、ALS発症を促進する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)核内機能の追究のうち、構築したcDNAライブラリーからイントロン配列が含まれるcDNAの存在をランダムスクリーニングするとした部分については、今回は、まずFUSにより制御を受ける遺伝子を対象とすることによる狙い撃ちの手法で検討をおこなった。
2)現時点での観察は、FUSに限定しており、TARDBPについては未着手となっている。
3)対象としてスクリーニングした選択的スプライシング遺伝子やLong pre-mRNA遺伝子のうちには、使用した子宮頸がん由来のHeLaS3培養細胞ではそもそも発現していないものもあり、部分的に実験系がうまくないと感じられることがあった。
4)MAPT遺伝子の4repeat-tauの産生割合の増加については、核内に局在するLc2ndが核内でMAPTのFUSによる選択的スプライシングを阻害したと考えられたが、一方、同じく選択的スプライシングの対象として報告されている遺伝子間でも影響に違いがみられたことから、FUSへの関与が直接ではないことも考えられる為、メカニズムの解明に更なる検討が必要である。

今後の研究の推進方策

1)核内機能の追究:核内移行の応答性因子として、Lc2ndが欠失している領域に結合するタンパクを同定する。
2)凝集体形成へのOPTNの寄与の検討:核内OPTNの存在下での、FUS凝集体形成が影響を受けることを示す結果得たので、この凝集体に内包される蛋白群の構成や速度の変化を、ラマン分光法による実験系を用いて計測する。それぞれの構成成分が異なる凝集体は、精製した後、質量分析装置で構成蛋白を決定する。
3)FUSで見いだされたと同様の知見が、TARDBPにおいてもみられるか検討する。
4)今回の知見は、プラスミドの薬剤耐性遺伝子による選択で作成した子宮頸がん細胞由来の培養細胞で得られたものである。Y79やSH-SY5Yなどの神経細胞系の培養細胞でも同様の結果が得られるか検討を要する。この場合、プラスミド導入細胞を選択する際に細胞の性格が偏るのを回避するために、ウイルスベクターを用いた系により遺伝子導入を全細胞に対しておこなう。また、これら神経系培養細胞の使用により、前項の3で示した遺伝子発現パターンのそもそもの違いの問題はクリアーできると考える。
5)その他、申請時に予定している検討や前項に記した問題点を解消するための検討をおこなう。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、外注となるオミックス的手法および装置の機能的改良など必要となる可能性も考えられるラマン分光法による解析を未実施のため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせ、前述の今後の研究の推進方針で示した計画に則り使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] OPTN蛋白質の核内機能とALS原因遺伝子FUS2022

    • 著者名/発表者名
      大坪正史
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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