研究課題/領域番号 |
22K07539
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 幹人 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (30817507)
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研究分担者 |
奥野 龍禎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00464248)
白石 直之 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10882285)
坂口 学 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(臨床研究支援センター), 脳神経内科, 主任部長 (70432474)
多田 智 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (70626530)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ALS / RGMa / NEO1 / actin dynamics |
研究実績の概要 |
2022年度の研究成果で、ALSモデルマウスにおいて亢進したRepulsive guidance molecule A(RGMa)シグナルは中枢神経のactinの脱重合を行うことより、異常タンパク質のプロパゲーションを促進し、病態を悪化させることを示した。2023年度はその他の機序の病態への関与を確認した。まずactinの関与が予想される神経筋接合部の評価を行ったところ、ALSモデルマウスにおいて観察される神経筋接合部の障害はRGMa抗体の投与により変化を示さなかった。またALSモデルマウスの脊髄において認められるグリオーシスや、ミクログリアの活性はRGMa抗体投与によって変化しなかった。 RGMaの下流のシグナルの検討も行った。2022年度の研究でRGMa刺激の主たる経路であるsmall GTPaseを介したcofilinの脱リン酸化による活性化が確認されたが、その他の経路であるsmadやprofilinのリン酸化の変化は確認されなかった。 in vitroの実験においては、RGMa刺激が入りやすいラットの神経細胞primary cellを用いて、RGMaと細胞骨格動態の実験系を確立した。これによりRGMa刺激により、extracellularのタンパク質の取り込みが亢進し、RGMa抗体を反応させることでそれがキャンセルされることが確認された。またRGMaのレセプターであるNEO1のknock downによってもextracellularのタンパク質の取り込みが低下されることが確認された。 これらにより中枢神経におけるRGMaシグナルの亢進が、異常タンパク質の細胞間伝播を促進し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態を悪化させることが示され、これらの変化はRGMa抗体により改善することも明らかになった。 これらの結果を纏めて論文とし、Science advancesに採択となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
もともと2023年度に予定していたin vitroの実験系においては予想より早くRGMaと細胞骨格に関しての結果をだすことができた。in vivoにおける補完実験も終了したため、論文にまとめ、Science advancesに採択されたため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は2023年の結果をもとにin vivoの実験をさらに推し進める予定である。今回の実験系の弱点は孤発性ALSで脊髄に沈着するタンパク質であるTDP43のプロパゲーションに関して、議論できていない点である。そのためTDP43の沈着が確認されているALSモデルマウス(変異型プロフィリンマウス)などを使用して、実験を進めてゆく予定である。 また細胞骨格障害を制御することによるプロパゲーションの抑制はALSに限らず、プロテイノパー全般に応用できる治療方針の可能性がある。アルツハイマー病やパーキンソン病などの髄液において、RGMaをはじめとした軸索ガイダンス因子の動態を確認することで、抗体治療のターゲットとなる可能性がある分子・疾患を同定し、今回の実験結果をその他の疾患にもつなげていければと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも順調に実験計画が進んでおり、論文を1本採択に至った。 今後はより孤発性ALSの病態に近づいた研究を行って行く予定である。 次年度はProfilinなどの細胞骨格に関係する分子に変異を組み込んだトランスジェニックマウスを実験に使用する予定であり、助成金をマウスの購入費に充てる予定としている。
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