研究課題/領域番号 |
22K07543
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
平澤 恵理 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (50245718)
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研究分担者 |
齋藤 文仁 日本医科大学, 医学部, 准教授 (20360175)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / コンドロイチン硫酸 / 脳梗塞 / グリア |
研究実績の概要 |
脳機能の維持と神経修復の観点からオリゴデンドロサイト(OL)系譜の多様性とそれを規定する糖鎖特異性を研究する中で、「コンドロイチン硫酸(CS)からなるパッチ構造に囲まれた未成熟OL」の存在を発見し、“第5のグリア”として着目した。脳の発達過程には、経験に応じ神経回路が柔軟に変化する“臨界期”があるが、この新たなパッチ構造は、臨界期終了時の大脳皮質に、特徴的な糖鎖抗原性と局在様式を示して出現する。これらの発見から、OL自身の分化・成熟やシナプスの維持に重要な役割を果たすという仮説を立てた。 本研究では、この糖鎖を纏う未成熟OLの機能解明を目的に、糖鎖分析、OLの分化培養、パッチ構造内外のスパイン形状の比較により仮説を立証する。OL 系譜の挙動が活発化する脳梗塞モデルの虚血回復巣にて神経修復への寄与を検証する。OPC、未成熟OLは、発達期の脳において髄鞘形成に至る過程にあると理解されてきたが、髄鞘形成が終了した成体脳にも、相当数存在することがわかってきた。このことは、これらのOL予備軍が成体脳にプールされ、虚血・炎症等の損傷に際し、増殖・分化・成熟を経て髄鞘形成に寄与する可能性を示唆する。NG2+グリア、GPR17+グリアは、未成熟OLの一群として発見され、現在研究が急展開しているが、研究代表者らが観察するCS56パッチに囲まれた未成熟OLは、その出現時期、糖鎖硫酸化の明確な特徴から、より機能性、特異性の高いサブクラスとして期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定常状態においてはCSパッチ+未成熟OLが成熟OL一歩手前でプール細胞として存在し、脳損傷が生じると速やかな修復に向けて起動する可能性を考えている。虚血再灌流時の挙動を観察することで、再髄鞘化など神経修復におけるCSパッチ+未成熟OLの役割を調べる。病態モデルとして、中大脳動脈閉塞(MCAO)マウスモデルを用いて梗塞および梗塞周囲、健常側同部位を解析する。これは、2023年度からの目標となるが、、2022年度に一部開始しており、中大脳動脈脳梗塞モデルを作成の条件設定とCSを纏った未成熟OLのプロファイルをを並行して進めた。電気凝固方法により、中大脳動脈脳梗塞モデルは安定的な梗塞巣を得ることが可能になった。免疫染色により、脳梗塞周辺のペナンブラ領域でのコンドロイチン硫酸の蓄積などを確認している。また、in vitroのシステムとしては、初代培養およびOL細胞株の培養系で、未成熟OLがCSパッチを作るかを確認することができた。OL細胞株については三次元培養の系を確立して、論文投稿し、2023年5月8日に受理された(Kato et al)。以上より概ね順調に進行していると考える、
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今後の研究の推進方策 |
今後、CSパッチを構成する糖鎖構造を明らかにし、パッチ内外のスパインの形状の違いからニューロンとの相互作用を示す。また、脳梗塞モデルに関しては現在7日目で定点観測しているが、梗塞作成後3週間目までを適宜観察し、オリゴデンドロサイト系譜細胞の挙動を免疫組織科学的手法を中心に検証していく。糖鎖解析については、現在市販のCS56抗体を中心に検討しているが、糖鎖の特異性に関しては、Kuppevelt博士よりCSユニットに対する特異的抗体シリーズの供与を受け詳細に検証する。生化学的には脳組織および培養細胞の二糖解析を行う予定である。梗塞モデルを用いた実験系であるので、実験に時間がかかる部分もあり、効率的に進めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は順調に進んだが、実験の順番を変更たしたりしたため、一部の実験が2023年度に持ち込むことになったため、今年度の使用額が想定より低くなった。
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