研究実績の概要 |
基礎研究においては、マウス一過性中大脳動脈閉塞モデルに対して、ペマフィブラート(0.1 mg/kg、0.3 mg/kg、1.0 mg/kg)または偽薬を経口投与したところ、ペマフィブラート投与群において48時間後の2,3,5-Triphenyl tetrazolium chloride(TTC)染色による脳梗塞体積の有意な縮小、神経後遺症スコアの有意な改善が得られた。さらに同モデルを用いて、脳組織における炎症生サイトカインの発現をReal time-PCRで評価すると、ペマフィブラート群において一部の炎症性サイトカインの発現が有意に抑制されていることが明らかになった。これらの結果は、ペマフィブラートによる強力なPPARα活性化作用が、NF-κBなどを介した炎症反応を抑制し、脳梗塞急性期の組織障害を軽減するものと推測している。現在はさらにwestern blotting、免疫組織染色による検討を進めている。 一方ヒトを対象とした臨床試験においては、脳梗塞発症から2週間以上が経過し状態の安定した患者のうち、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症のある患者にペマフィブラートを投与し、血管イベントの発症、死亡、頸動脈超音波による頸動脈病変の進展度、脳MRI/Aにおける小血管病病変(白質病変)及び脳動脈狭窄病変の進展度、血液中の各種脂質・糖・炎症マーカーの追跡を継続している。治療開始後3ヶ月後の血液検査データの変化については既にJournal of Atherosclerosis and Thrombosis誌にて発表しており、PPARα活性化に伴うリポタンパク代謝異常(TG、HDL-C、レムナント)の著明な改善、炎症マーカー(interleukin-6、高感度CRP)の低下がみられている。現在は2年間の追跡をほぼ終了し、データ解析中である。
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