研究課題/領域番号 |
22K07558
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
有岡 祐子 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任講師 (10709497)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 22q11.2欠失 / iPS細胞 / ドパミン神経細胞 / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
22q11.2欠失症候群(22q11.2DS)患者は、神経発達症、統合失調症等の精神疾患に加え、若年型パーキンソン病等の神経変性疾患といった多様な精神・神経疾患を高率に発症する。これまでに研究代表者有岡は、22q11.2DS患者の精神・神経疾患病態と関係しうる中脳ドパミン神経細胞を解析し、患者神経細胞に異常をもたらす分子機構のひとつとしてキナーゼタンパク質PERKの機能不全を同定した。そこで本研究の目的はiPS細胞を用いて「PERKに着目した22q11.2DS患者の脳内分子・細胞機構を理解すること」である。 令和4年度の研究実績は次のとおりである。 ①22q11.2DS患者でのPERKの発現低下がドパミン神経細胞特異的であるかどうかを確認するため、未分化なiPS細胞、そのiPS細胞から分化誘導させたpan neuron(複数の神経系細胞種が混在だが主に興奮性神経細胞)、iPS細胞から分化誘導させたドパミン神経細胞でPERKの発現を比較したところ、22q11.2欠失患者で顕著なPERK発現低下が認められたのはドパミン神経細胞のみであった。この結果から、22q11.2欠失患者でのPERKの発現低下はドパミン神経細胞特異的である可能性が考えられた。②iPS細胞から誘導したドパミン神経細胞が実際の生体脳のどの時期を反映しているかを調べるため、1細胞RNAシークエンスを実施し、ヒト発生初期の公開データセットを利用して解析したところ、iPS細胞から誘導したドパミン神経細胞は脳発生の超初期段階を反映していることが明らかとなった。今後、患者およびPERK欠失iPS細胞を用いた1細胞RNAシークエンス解析も実施予定である。③中脳オルガノイドの誘導法の最適化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中脳オルガノイドの最適化に時間を要しているから。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、PERKを中心とした22q11.2欠失症候群の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞からの中脳オルガノイド誘導方法の最適化に時間を要し、中脳オルガノイドを対象とした機能解析の試薬を購入していないため次年度使用が生じた。次年度は、この未使用額を中脳オルガノイドの機能解析用の試薬購入に充てる予定である。
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