研究課題
高齢者のうつ病と認知症の早期鑑別は、薬物療法と介護手段の選択に直結するため大変重要である。高齢者のうつ病は数年で高率に認知症に移行するため、共通した病態メカニズムとして神経炎症、とくに脳内ミクログリアが関与するとされる。しかし、高齢者のうつ病および認知症において、ミクログリアの機能にどのような共通点あるいは相違点があるのか?という疑問は未だ解明されていない。研究代表者らは患者血液サンプルからヒト・ミクログリア様細胞(iMG)を作製し、機能を解析する技術を確立している。本申請研究では、iMGを駆使して、高齢者のうつ病および認知症の病態メカニズムの共通点あるいは相違点を解明することを目的とする。初年度においては、精神神経科病棟に入院した65歳以上の高齢者のうつ病および認知症患者から血液サンプルを採取し、iMGを作製した。作製したiMGを用いて、高齢者うつ病および認知症の共通する病態メカニズムを解明するため、Aβタンパク貪食能の定量を実施した。作製したiMG細胞は末梢マクロファージよりも脳内ミクログリア細胞に近いmRNAを発現していた。Aβタンパク貪食能については、免疫染色法で定量できた。現在サンプル数を増やしており、今後マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析結果を炎症関連物質に着目して比較することにより、高齢者のうつ病および認知症の病態メカニズムの共通点あるいは 相違点を明らかにする。
3: やや遅れている
うつ病および認知症患者から各10名分ずつサンプルを採取する予定であるが、症例数がまだ不足している。
作製したiMGを用いて、高齢者うつ病および認知症の共通する病態メカニズムを解明するため、 1)Aβタンパク貪食能の定量、2)細胞内Ca2+動態およびNO産生・放出能の解析を実施する。さらに次年度においては、うつ病および認知症患者から採取したサンプルが各10名分ずつ集まった時点で、iMG mRNAを、3)マイクロアレイ解析する。マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析結果を炎症関連物質に着目して比較することにより、高齢者のうつ病および認知症の病態メカニズムの共通点あるいは 相違点を明らかにする。最終年度は2年目までの知見をまとめるが、本申請研究では、マイクロアレイ解析結果で得られたうつ病および認知症の病態に関連する各候補分子について、4)フローサイトメトリーや免疫染色等により、細胞内動態を詳細に解明できると考えている。
サンプル数が揃った後、マイクロアレイに支出する計画である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
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