研究課題/領域番号 |
22K07568
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
森信 繁 広島国際大学, 健康科学部, 教授 (30191042)
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研究分担者 |
淵上 学 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (40403571)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | RNAメチル化 / PTSD / 恐怖記憶 / 消去障害 / Single prolonged stress |
研究実績の概要 |
1) 恐怖記憶の消去障害に関与するRNAメチル化機構の障害の解明及びRNAメチル化・脱メチル化酵素の発現変動の解析 Single prolonged stress (SPS)負荷ラットの海馬を対象にglobal RNAメチル化率の対照群ラット海馬との比較を行った。恐怖条件付け試験(CFC)負荷後24時間の時点で行った消去訓練によってRNAメチル化率の減少傾向が、また消去試験前にも減少傾向がSPS負荷ラットで検出された。同時に行ったMETTL3, METTL14 mRNAの発現変動の解析では、SPS負荷ラット海馬でのMETTL3, 14 mRNA発現の有意な低下(消去訓練後・消去試験前)がみられ、FTO, ALKBH5 mRNAの発現の有意な亢進(消去試験後)がみられた。 2) RNAメチル化・脱メチル化酵素阻害薬のRNAメチル化障害修復による恐怖記憶の消去障害への治療効果の解析 SPS負荷ラットのCFC負荷後及び消去訓練前に、FTO, ALKBH5の阻害薬Meclofenamic acidを投与して、阻害薬の消去障害に対する修復効果を検討中である。 3) RNAメチル化障害に由来する恐怖記憶の消去障害に関与する記憶関連遺伝子の探求 SPS負荷ラット及び対照群ラットの海馬を消去訓練後に摘出し、abti-m6A antibodyを用いた免疫沈降を行い、得られたRNAを精製してCDNAに逆転写し増幅を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 恐怖記憶の消去障害に関与するRNAメチル化機構の障害の解明及びRNAメチル化・脱メチル化酵素の発現変動の解析については、RNAメチル化率の結果の分散が大きく追加実験が必要であるが、酵素発現の実験は既に終了している。 2) RNAメチル化・脱メチル化酵素阻害薬のRNAメチル化障害修復による恐怖記憶の消去障害への治療効果の解析については、阻害薬の種類や投与条件などの検討を済ませ、既に少数であるが行動実験結果得ており、特に進行に問題ないと考える。 3) RNAメチル化障害に由来する恐怖記憶の消去障害に関与する記憶関連遺伝子の探求については、計画に沿って実験が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 恐怖記憶の消去障害に関与するRNAメチル化機構の障害の解明及びRNAメチル化・脱メチル化酵素の発現変動の解析については、RNAメチル化率の解析についてn数を増やして再度実験を行う。 2) RNAメチル化・脱メチル化酵素阻害薬のRNAメチル化障害修復による恐怖記憶の消去障害への治療効果の解析については、FTO, ALKBH5阻害薬の投与実験を継続して行う。 3) RNAメチル化障害に由来する恐怖記憶の消去障害に関与する記憶関連遺伝子の探求については、増幅したcDNAを対象にシークエンスを行いAlignmento後に、SPS負荷ラット海馬で発現の顕著に低下している遺伝子群の中で特に記憶機能に関連する遺伝子を抽出する。その上でReal-time PCRを用いて、発現の低下を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表研究者の2023年10月の転勤(吉備国際大学から広島国際大学)で、実験施設の移転などのために実験のできない期間(2023年9月から同年11月)があり、次年度使用額が出来た。次年度(2024年度)に行うRNAメチル化率解析の追加実験や、anti-m6A-specific antibodyを用いたChIP-sequence法によう恐怖記憶の消去障害に関与する遺伝子の探索実験に用いる試薬の購入などに必要となる。
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