研究課題
休息モードである「睡眠」や「冬眠」の制御機構は意外にも複雑で、それらの詳細な制御メカニズムは未だ解明に至らない。最近の研究では、申請者が発見したペプチドQRFPを特徴的に発現する神経細胞(Q神経)がマウスにおける能動的低代謝誘導を可能にすると示された。この冬眠様状態を誘導する神経回路はヒトを含めた他の哺乳類にも普遍的に存在する可能性が高い。本研究では、この冬眠様状態を誘導する神経回路がヒトへの外挿性を有することの根拠を調べるため、脳内局所のQ神経の存在をRNAレベルで確認する。さらに、冬眠に関わる物質として、QRFPをヒトの脳脊髄液で測定する。また、冬眠が低代謝にも関わることから、オレキシンとの相関も検討する。これらの結果を通して、将来的には休息モード「睡眠」および「冬眠」を調節する戦略を検討するのが本研究の目的である。QIHのヒトへの外挿性の確認のため、まず、ヒトの視床下部のRNAを用いてQRFPmRNAの定量を実施し発現していることを確認する。クラインレビン症候群および季節性感情障害患者の脳脊髄液検体を用いて、冬眠様行動を誘発するQ神経に発現しているQRFP、睡眠を抑制するレム睡眠を抑制するオレキシンを測定し変動を確認する。次いで二年目以降摂食関連ペプチドであるNPYおよびAgRPを測定し、休息モード関連ペプチドと摂食関連ペプチドの相互の相関を検討し、相互の調節機構を解明に結び付ける。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、ヒト視床下部RNAを購入し、QRFPのmRNA定量の準備をした。オレキシンとQRFPの測定はクラインレビン症候群および季節性感情障害患者検体の入手状況に応じて随時測定中である。
二年目には、QRFPmRNAの定量を実施する。オレキシンとQRFPの測定はクラインレビン症候群および季節性感情障害患者検体の入手状況に応じて随時測定するとともに、オレキシンとQRFPの相関関係を検討する。次いで二年目以降摂食関連ペプチドであるNPYおよびAgRPを測定し、休息モード関連ペプチドと摂食関連ペプチドの相互の相関を検討し、相互の調節機構を解明に結び付ける。
COVIDの影響で視床下部RNAや試料の入手が遅れた。入手できたので次年度に実験を開始する。
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Dementia Japan
巻: 36 ページ: 691
Insomnia Research
巻: 31 ページ: 32-37