研究実績の概要 |
本研究では、思春期を対象にミスマッチ陰性電位(mismatch negativity: MMN)と聴性定常反応(auditory steady-state response: ASSR)および関連する指標を包括的かつ縦断的に測定し、思春期におけるMMNやASSRの発達が精神疾患のリスクを形成する過程を明らかにすることを目的とする。 思春期を対象にMMNとASSRおよび認知機能、メンタルヘルス、環境要因に関連する指標を包括的かつ縦断的に測定するプロトコールは発表済みである(Okada et al., Psychiatry Clin Neurosci, 2019)。具体的には、思春期の一般集団から研究参加の同意を得たうえで脳波を記録した。聴覚オッドボール課題中の脳波からMMNを、40Hzのクリック音提示中の脳波からASSRを測定した。また、認知機能、メンタルヘルス、環境要因に関連する指標も取得した。得られたデータについて、MMNやASSRの縦断変化と認知機能やメンタルヘルスの縦断変化がどのように関連するかなどを調べている。その結果、思春期におけるMMNの縦断的変化が心理的困難さの縦断的変化と関連することを明らかにした(Usui et al., Cereb Cortex, 2023)。 MMNやASSRと精神疾患との関連では以下の結果を得た。20Hzの刺激に同調して出現するγオシレーションは統合失調症の早期段階で低下していなかった(Tada et al., Neuropsychopharmacol Rep, 2023)。ASSRは健常者では大脳白質が保たれていることと関連しているが、それらが統合失調症で障害されていた(Koshiyama et al., Schizophrenia, 2024)。
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