研究課題/領域番号 |
22K07575
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川端 梨加 金沢大学, 附属病院, 研究員 (70726207)
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研究分担者 |
坪本 真 金沢大学, 附属病院, 助教 (40835906)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 死後脳 / GABAニューロン |
研究実績の概要 |
本年度は、統合失調症患者、双極性障害患者、うつ病患者、並びに精神神経疾患の罹患歴のない健常対照者の死後脳より背外側前頭前野の灰白質組織を白質の混入を避けて注意深く切り出し、Trizol液に撹拌しRNA抽出キットを用いて遺伝子発現解析に用いるサンプルを準備した。性別が同じで、年齢、死後経過時間、脳の状態を反映する脳組織pHなどが近い、各患者および対照者のそれぞれ1名の計4名を1組とする40組(各グループ40名)よりRNAサンプルを準備した。死後脳提供者の性別は、各グループとも男性22名、女性18名(X2(3) = 0.00; p = 1.00)、平均年齢(SD)は、統合失調症患者群が47.4(12.2)歳、双極性障害患者群が45.8(12,4)歳、うつ病患者群が45.5(11.7)歳、精神神経疾患の罹患歴のない健常対照者(UC)が46.8(12.8)歳で、グループ間での有意差は無かった(F3,156 = 0.20; p = 0.90)。脳組織の死後経過時間の平均(SD)は、SZが19.9(7.4)時間、BPが20.8(7.0)時間、MDが19.2(5.8)時間、UCが19.6(5.6)時間で、同じく有意差は無かった(F3,156 = 0.46; p = 0.71)。脳の状態を反映する脳組織pH(SD)は、SZが6.5(0.3)、BPが6.6(0.3)、MDが6.5(0.2)、UCが6.7(0.2)で、同じく有意差は無かった(F3,156 = 1.83; p = 0.15)。大脳皮質より抽出されたRNAサンプルのRNA integrity number (RNAの品質を評価する指標:RIN) (SD)は、SZが8.0(0.6)、BPが7.9(0.7)、MDが8.0(0.6)、UCが8.1(0.6)で、同じく有意差は無かった(F3,156 = 0.77; p = 0. 51)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大により、共同研究先での脳組織の準備が進まず、RNAサンプルが得られたサンプルが背外側前頭前野のみとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
背外側前頭前野におけるGABAニューロン変化について、PVニューロンに選択的に発現するカリウムチャネルサブユニットKCNS3、PVニューロンおよびSSTニューロンとは独立したサブタイプである血管作動性腸管ペプチド(VIP)陽性ニューロンのマーカーであるVIPおよびカルレチニン(CR)、GABAニューロン全体に発現するGAD67の発現を、健常対照者と統合失調症、双極性障害、うつ病の各患者においてreal-time PCRにより計測し、各疾患における対照者からの変化を比較する。さらに、錐体ニューロンに選択的に発現し統合失調症の前頭前野で発現低下が報告されているBDNF及びNPTX2と錐体ニューロンの棘突起の変化を反映すると考えられるアクチン制御遺伝子の統合失調症における発現変化を作業記憶ネットワークを形成する背外側前頭前野、後部頭頂野、視覚野において評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNAの抽出については、研究室にすでに存在する試薬およびキットを使用したため、費用が生じなかった。また、real-time PCRによる遺伝子発現解析は行えなかったので試薬等の購入に費用が発生しなかった。また、新型コロナウイルスの感染防御の観点から、臨床医である研究分担者が、感染が広く拡大しながらも感染対策が緩和されている米国への出張を控えたため、旅費も発生しなかった。次年度は、GABAニューロンに発現するKCNS3, VIP, CR, GAD67の発現量を統合失調症、双極性障害、うつ病の各患者と健常対照者の背外側前頭前野でreal-time PCRで定量するのに加え、錐体ニューロンに選択的に発現するBDNF, NPTX2や錐体ニューロンの棘突起の制御を行うARPC3, ARPC4, CDC42の発現量を健常対照者および統合失調症患者の背外側前頭前野、後部頭頂野、視覚野などの複数の領域で定量するために、キットおよび試薬を購入する。また、双極性障害およびうつ病患者の死後脳から背外側前頭前野、後部頭頂野、視覚野のサンプルを準備するために、研究分担者が共同研究先へ出張する。
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