研究課題/領域番号 |
22K07586
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
鳥塚 通弘 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20588529)
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研究分担者 |
山室 和彦 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (60526721)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / マクロファージ / 炎症性サイトカイン / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
健常者2名由来のiPS細胞株から分化誘導した興奮性ニューロンと、末梢血単核球から誘導したマクロファージの共培養系を用いた解析について、昨年度から定型発達者および自閉スペクトラム症患者、各群5名計10名から検体を得て解析を行ってきた。マクロファージのうち、GM-CSF誘導(いわゆるM1)マクロファージにおける炎症性サイトカインの発現と、同細胞がiPS細胞由来興奮性ニューロンの樹状突起を退縮させる効果について、自閉スペクトラム症群で有意に高いことを確認した。原因となる炎症性サイトカインについては、既報やqRT-PCRの結果からTNF-αとIL-1αが可能性が高いと考えた。これを確かめるべく、ニューロンへのリコンビナント蛋白質の添加実験や、共培養系への中和交代の投与実験を行い、この2種のサイトカインが主要因であることを確認した。ヒトiPS細胞から分化誘導した興奮性ニューロンにこれらサイトカインの受容体が発現していることも確認できた。これら結果については論文としてまとめ、成果としてMolecular Autism誌に投稿し、掲載された。 このように、自閉スペクトラム症におけるマクロファージ機能の変化について、もう一方の極性となるM-CSF誘導(いわゆるM2)型ではどうか、についても確かめるための実験を行っている。M-CSF誘導型は、栄養因子の放出や、貪食に関わることが知られている。マクロファージが脳内に入るわけではないと思われるが、精神疾患との関連を考える上で、上記iPS細胞から分化誘導したヒトニューロンを用いて、シナプス形成に与える影響を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自閉スペクトラム症におけるマクロファージ機能の異常を見出す方向での研究は成果を得た。上流の分子や細胞の影響を検討する上でも、十分な細胞表現型の抽出は必須であるが、そこに資源を投入したため、他の血球系細胞の分離培養系の確立などは遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージの解析は急ぐが、各群20名を目標にする。分離培養系の確立も順次進めていく。
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