研究課題/領域番号 |
22K07596
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
工藤 喬 大阪大学, キャンパスライフ健康支援・相談センター, 教授 (10273632)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / エクソソーム / タウ / Aβ40 / Aβ42 |
研究実績の概要 |
アミロイドワクチンの登場で、根本的治療のなかったアルツハイマー病(AD)医療はDisease-modifying drugの時代へといよいよ向かうことが期待されている。 しかし、この抗体療法は今のところ極めて高価であり、どのような患者に投与するかを決定するために、厳格な診断が必要となってくる。近年、ADの特異的な診断技術として、脳脊髄液中のタウ蛋白およびアミロイド蛋白の定量、あるいはアミロイドPETなどが開発されてきたが、前者は侵襲性が高く、後者は高価であることが問題視されている。従って、低侵襲性で安価の方法、すなわち通常の末梢採血による診断技術が待たれている。 申請者は神経細胞膜特異的分子であるAPLP1をターゲットとして免疫沈降することで神経由来エクソソーム(NDE)を血漿から分離する技術を確立している。本年度はまず実際に血漿中にNDEが存在するかを検討した。血漿を用いたproteinase Kによるprotection assayを行ったところ、エクソソームに含有される神経蛋白であるタウがデジタルELISAによって検出され、確かにNDEが血漿中に存在することを確認した。 さらに、APLP1の細胞外ドメインに選択性の高いモノクロナール抗体を作成し、抗APLP1抗体による免疫沈降でNDEを分離する技術の改良を行った。この技術により免疫沈降ビーズから酸溶出して、APLP1およびエクソソームマーカー陽性の検出NDEそのものを分離することに成功した。脳脊髄液データ付きの阪大病院を受診したAD患者の血漿よりNDEを分離し、デジタルELISA(Simoa)で解析した。ADに関連するProtein Xが脳脊髄液のトータルタウ、リン酸化タウと相関し、Aβ42/Aβ40と逆相関することが示された。ADの脳脊髄液ではトータルタウ、リン酸化タウは上昇し、Aβ42/Aβ40は低下を示すことから、このNDE中のProtein Xは新たなADの血液バイオマーカーになりうる可能性が示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、実際に血漿中にNDEが存在することを確認する必要があると考え、本年度はその実験を行った。 また、使用しているAPLP1の抗体によりNDEの収量が変わること、さらにはビーズより溶出した純度の高いNDEを得る必要性を鑑み、技術の改良を行ったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
NDE分離技術に関し、抗モノクロナールAPLP1抗体の安定供給およびビーズからのよりインタクトなNDEを溶出するためペプチドによる溶出を確立必要性が浮上している。従って、このような実験を済ませたのち、実際の患者サンプルの解析に進む予定である。
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