研究実績の概要 |
伊予市中山町の65歳以上の全住民を対象として認知症の疫学調査を行った。彼らは、生活環境アンケート、身体検査、Mini-Mental State Examination、脳磁気共鳴画像などの多くの検査を行った。ベースライン評価には927人が参加し、611人(65.9%)が健常者、165人(17.8%)が軽度認知障害(MCI)、151人(16.3%)が認知症であった。認知症の年齢標準化有病率は9.5%であった。MCIとアルツハイマー病(AD)に関する統計解析の結果、認知機能低下の危険因子は糖尿病、日常生活動作の低下、一人暮らしであり、保護因子は運動歴と飲酒習慣であった。また当地区における1994年からの経年的な調査においてもADの有病率が上昇していることを突き止めた。伊予市中山町を含む全国8か所の大規模コホート調査における頭部MRI画像からは、老年期の高血圧が認知症のリスクである血管周囲腔拡大と関連していることを突き止めた。さらに血清高感度CRPの上昇と認知症リスクおよび側頭葉萎縮が関連していることも突き止めた。またADのモデルマウスを用いた研究では海馬においてGABAに関連する遺伝子が変化していることを突き止めた。現在は、予定通りAD, MCI,健常者の血液の遺伝子発現を解析中であり、ADと細胞老化の関連を検討する準備をしている。また血液の遺伝子解析から得られた結果をもとに細胞老化に関わることが知られている脂質代謝の研究にも着手するべく、愛媛大学大学院免疫学・感染防御学講座との共同研究も進めている。
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