研究課題/領域番号 |
22K07610
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
安野 史彦 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (60373388)
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研究分担者 |
木村 泰之 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 認知症先進医療開発センター, 副部長 (20423171)
加藤 隆司 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院 放射線診療部, 部長 (60242864)
渡邉 淳 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 研究推進基盤センター, 室長 (90321843)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アルツハイマー型認知症 / 精神行動症状 / 炎症系サイトカイン / PET炎症イメージング |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症 [Alzheimer’s disease (AD)] の精神症状発現に、血液中のサイトカインをはじめとする炎症性物質が影響を及ぼす可能性があるが、その詳細は明らかではない。本研究においてはAD患者に対して精神症状を中心に病態の評価を行ったうえで、血液中の炎症系サイトカインを中心とした炎症関連物質に関する網羅的解析を実施し、全身性炎症と精神症状の関係性について検討を行う。また、精神症状がある程度落ち着いておりPETによる脳内炎症イメージング検査が可能な患者については、同時にそれを行うことで、脳内炎症の定量を行う。
現在、症例を集めつつある過程である。現時点でAD病理陽性AD患者15名に対して、血液採取および認知症精神・行動評価の実施状況を確認のうえ、血液中のサイトカインをはじめとする炎症性物質と精神行動面の関係について評価を行っている。患者において、Geriatric depression scale (GDS)(抑うつ症状評価)、 vitality index (意欲)、Dementia Behavior Disturbance scale(DBD)(認知症行動障害評価)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)(認知症行動・心理症状)についてデータを抽出した。血液中の炎症関連物質に関する検討において、血液データの解析を行った。その結果、全身性炎症を反映する末梢血中のサイトカインの中でも特にIL-6が、精神行動面と相関性を有することが示されつつある。今後、より多くの被験者データの解析を進めることで、炎症系サイトカインと精神行動面の関連について、より詳細を明らかにできることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における研究次年度の計画は、初年度までの経験に基づき検査を継続し、アルツハイマー型認知症(AD)患者の被験者数を拡大したうえで、可能な被験者において、PET分子イメージングにより、脳内炎症病態を定量し、同時に臨床症状評価および髄液・血液中の炎症関連物質の解析を同時に実施することで全身性炎症と同時に、脳内炎症について定量的な評価を行い、全身性炎症と脳内炎症の関係性を評価し、同時に、それらの関係性が、ADの精神症状発現に及ぼす影響を明らかにすることで、ADの精神症状における、全身および脳内炎症を介した発症機序の解明を行うことにある。
現在、症例を集めつつある過程である。現時点でAD病理陽性AD患者15名に対して、血液採取および認知症精神・行動評価の実施状況を確認のうえ、血液中のサイトカインをはじめとする炎症性物質と精神行動面の関係について評価を行っている。患者において、Geriatric depression scale (GDS)(抑うつ症状評価)、 vitality index (意欲)、Dementia Behavior Disturbance scale(DBD)(認知症行動障害評価)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)(認知症行動・心理症状)についてデータを抽出した。血液中の炎症関連物質に関する検討において、血液データの解析を行った。その結果、全身性炎症を反映する末梢血中のサイトカインの中でも特にIL-6が、精神行動面と相関性を有することが示されつつある。精神行動面の評価尺度であるDBD、NPI得点とIL6の間に有意かつ比較的強い相関(相関係数r>0.7)を認めており、ADの精神行動症状発現に、炎症性物質が影響を及ぼす事実が裏付けられつつある。
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今後の研究の推進方策 |
我々の結果は、全身性炎症を反映する末梢血漿中の炎症促進系サイトカインの中でもIL-6が、AD病理を有する患者において、幻覚妄想をはじめとする精神行動面の症状の発現と何らかの関係を有する可能性を示している。今後、より多くの被験者データの解析を進めることで、炎症系サイトカインと精神行動面の関連について、より詳細を明らかにできることが期待される。 また、PET炎症イメージング検査が可能なAD患者については、全身性炎症と同時に、脳内炎症について定量的な評価を行い、全身性炎症と脳内炎症の関係性を評価し、同時に、それらの関係性が、ADの精神症状発現に及ぼす影響を明らかにすることで、ADの精神症状における、全身および脳内炎症を介した発症機序の解明を今後の研究課題として進めていく予定である。本研究によってADの精神行動症状について、全身および脳内炎症を介した発症機序の解明と、抗炎症作用に基づく精神症状改善にむけた治療法の開発の基盤形成が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
血液中のサイトカインをはじめとする炎症性物質の解析に必要な抗体および物品において備蓄があり、当該年度で新たに購入の必要が生じなかった。しかしながら、備蓄していた抗体は当該年度で全て使い切ったために、次年度使用額を利用して新たに炎症性物質の解析に必要な抗体および物品を購入する予定である。
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