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2022 年度 実施状況報告書

うつ病における脳内テロメア短縮のメカニズムー動物モデルによる検討

研究課題

研究課題/領域番号 22K07622
研究機関北海道医療大学

研究代表者

泉 剛  北海道医療大学, 薬学部, 教授 (60312360)

研究分担者 鹿内 浩樹  北海道医療大学, 薬学部, 講師 (00632556)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードうつ病 / 動物モデル / 海馬 / テロメア / テロメラーゼ / β-catenin
研究実績の概要

テロメアは細胞寿命の決定因子であり、老化や疾患により短縮する。うつ病とテロメア短縮の関連が報告されており、我々のグループも自殺者のテロメア短縮を報告した。うつ病モデル動物(幼若期ストレス、3WFS)でテロメアを検討したところ、海馬でテロメアが短縮し、テロメア複製酵素の活性ユニットであるTERTが減少しており、うつ病関連分子であるGSK3βの活性が増加していた。GSK3βはβ-cateninを阻害し、β-cateninはTERTの転写を促進するため、GSK3βの活性増加によりβ-cateninとTERTの変化を介してテロメアが短縮した可能性が考えられた。この仮説を実証すするため、3WFSラットの海馬でβ-cateninのタンパク量を測定したところ、有意な低下が認められた。更に、この変化がうつ様行動と関連した変化であるかどうか確かめるため、現在、3WFSラットに抗うつ薬であるエスシタロプラムを投与し、海馬において、うつ様行動の改善と平行したβ-cateninタンパク量の回復が認められるかどうか検討を行っている。一方、β-cateninは細胞質でGSK3βによってリン酸化され、リン酸化体はユビキチン化によって分解される。リン酸化を免れたβ-cateninが核内へ移行し、TCF-4等の転写関連タンパクと複合体を形成して、遺伝子の調節領域に結合して作用する。そのため、3WFSによる海馬でのβ-cateninの活性低下を確認するため、核画分のβ-catenin量を分離して定量する必要がある。現在、予備的検討として、キットを使用して、ラットの海馬サンプルで細胞分画を試みている。手法に問題がないようであれば、今後、核画分のβ-cateninの定量を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予想通り、3WFSラットの海馬でβ-cateninのタンパク量が有意に低下していることが確認できた。この変化がうつ様行動と関連した変化であるかどうか確かめるため、現在、3WFSラットに抗うつ薬であるエスシタロプラムを投与し、海馬において、うつ様行動の改善と平行したβ-cateninタンパク量の回復が認められるかどうか検討を行っている。1群12匹×4群=48匹で実験を行う予定であり、現在、約半分の匹数まで実験を行っており、来年度中にすべて終了する予定である。また、海馬における核画分のβ-cateninの定量実験についても、基礎検討は順調に進展しており、来年度中に本実験を終了する予定である。

今後の研究の推進方策

来年度中に、β-cateninタンパクの定量実験はすべて終了する予定である。また、3WFSラットの海馬におけるGSK3βの活性増加の上流の遺伝子変化を検出するため、3WFSストレス負荷直後(4週齢)と成熟後(10週齢)の2つのタイミングで、海馬のRNAマイクロアレイの実験を行う予定である。候補となる遺伝子群が抽出できた場合、定量PCRやウェスタンブロティングにより所見を確認し、これらの変化が抗うつ薬の反復投与で回復するかどうかも検討する。

次年度使用額が生じた理由

今年度の科研費の残額は実験動物の購入にあてる予定であったが、必要額が残額を上回ったため、別財源で実験動物を購入し、残額は次年度の実験動物購入に充てることとした。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] D-serine metabolism in the medial prefrontal cortex, but not the hippocampus, is involved in AD/HD-like behaviors in SHRSP/Ezo2022

    • 著者名/発表者名
      Shindo Tsugumi、Shikanai Hiroki、Watarai Akane、Hiraide Sachiko、Iizuka Kenji、Izumi Takeshi
    • 雑誌名

      European Journal of Pharmacology

      巻: 923 ページ: 174930~174930

    • DOI

      10.1016/j.ejphar.2022.174930

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Separation and detection of D-/L-serine by conventional HPLC2022

    • 著者名/発表者名
      Shikanai Hiroki、Ikimura Kazuko、Miura Momoko、Shindo Tsugumi、Watarai Akane、Izumi Takeshi
    • 雑誌名

      MethodsX

      巻: 9 ページ: 101752~101752

    • DOI

      10.1016/j.mex.2022.101752

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] SSRIの抗不安作用の機序ー脳内セロトニン神経系について2022

    • 著者名/発表者名
      泉 剛、今野幸太郎、渡辺雅彦、田中謙二、鹿内浩樹
    • 学会等名
      第14回日本不安症学会
    • 招待講演
  • [学会発表] うつ病モデル動物におけるテロメア2022

    • 著者名/発表者名
      鹿内浩樹、進藤つぐみ、尾崎和音、大橋敦子、大塚郁夫、菱本明豊、泉剛
    • 学会等名
      BPCNPNPPP4学会合同年会
    • 招待講演
  • [学会発表] うつ病における海馬オレキシン神経系の関与2022

    • 著者名/発表者名
      鹿内浩樹、進藤つぐみ、尾崎和音、馬渕莉穂、中井慎一、大橋敦子、泉剛
    • 学会等名
      第73回日本薬理学会北部会
  • [学会発表] 幼若期ストレス負荷うつ病モデル動物の脳内GSK-3β/β-cateninシグナルの異常2022

    • 著者名/発表者名
      尾崎 和音、進藤 つぐみ、日下 翔太、脇田 征太朗、鹿内 浩樹、 大橋 敦子、泉 剛
    • 学会等名
      第35回北海道薬物作用談話会
  • [学会発表] AD/HDの薬物治療の新しい戦略2022

    • 著者名/発表者名
      鹿内浩樹、進藤つぐみ、平出幸子、木村真一、飯塚健治、泉 剛
    • 学会等名
      第96回日本薬理学会年会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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