研究課題/領域番号 |
22K07640
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田辺 昌寛 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90537250)
|
研究分担者 |
伊東 克能 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00274168)
飯田 悦史 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (70535244)
東 麻由美 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (00838279)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 膵癌 / MRI / 拡散強調像 / T1マッピング / マルチパラメトリック |
研究実績の概要 |
膵癌はダイナミックCTで診断されることが多いが、腫瘍細胞レベルの構造変化や機能代謝を評価するのにはMRIの方が優れている。膵癌の治療では、術前化学療法が登場しており、治療効果を迅速に評価できるMRIでの評価基準が求められている。MRIの撮像法の中でも、細胞レベルでの構造的特性に敏感な拡散強調像 (diffusion weighted imaging: DWI)、線維化などの組織構成を反映するT1マッピング、微小環境の血行動態をとらえることができるダイナミック造影は、膵癌化学療法の治療効果予測が期待できる撮像法である。 拡散強調像は治療前後の変化を評価するのに有用な撮像法と考えられている。しかし、従来の撮像法では空間分解能が低く、腫瘍内部の性状を十分に評価できているとは言えない。近年、局所励起に傾斜励起を併用するtilted DWIが開発され、この手法を用いた狭い撮像視野(field of view: FOV)撮像では、ノイズやアーチファクトを低減したまま、高い空間分解能の画質を実現することができる。T1マッピングは膵癌内部の線維化などを反映しうる定量的な手法である。これまでのT1マッピングの諸家の報告は脂肪抑制を併用していないことが多い。T1値は脂肪の影響を受けると考えられるため、脂肪組織に囲まれている膵臓の定量においては脂肪抑制のT1マッピングの方が望ましい。腹部ダイナミックMRIは息止めで撮像されることが多いため、空間分解と時間分解能を両立させた撮像を行うための工夫がなされてきた。撮像技術の進歩により、1回の息止めで1mm程度のスライス厚の腹部画像を撮像できるようになった。 本研究では、局所傾斜励起や脂肪抑制併用T1マッピングなどの新しい技術を利用して、膵癌症例に対して高精細マルチパラメトリックMRIを撮像し、精度の高い化学療法効果予測モデルの作成を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①ファントム実験: 脂肪抑制併用T1マッピングの検証を行った。水、サラダ油、界面活性剤、増粘剤、造影剤を所定の割合で配合し、T1値を一定にした0~30%脂肪濃度の模擬膵臓ファントムを作成した。撮像パラメータの調整を行い、適正な測定結果が得られることを確認して臨床症例に応用する。
②症例の蓄積:進行中 膵癌症例に高精細マルチパラメトリックMRIを撮像する。DWIは従来の撮像法とreduced FOV tilted DWIの両方を撮像し、画像解析にて比較検討を行う。脂肪抑制T1マッピングを撮像し、膵癌および周囲膵組織の脂肪の影響を検討する。ダイナミック造影は4時相(単純、動脈相、膵実質相、後期相)の撮像を行い、パラメータの調整を行って膵癌内部の描出能向上に努める。
|
今後の研究の推進方策 |
①症例の蓄積:継続
②画像解析:拡散強調像に関して視覚的な定性評価を行い、膵癌の鮮明度やノイズの程度を4段階(評価不能、画質不良、中等度、良好)に評価する。定量評価として、信号雑音比(SNR)、コントラスト雑音比(CNR)ADCの測定を行う。それらの結果を従来のDWIと比較する。T1マッピングでは、膵癌および周囲膵組織も関心領域 (region of interest: ROI)を設定し、脂肪抑制の有無によってT1値に変化があるかを検討する。ダイナミック造影では、DWIやT1マッピングから得られた情報を参照して、腫瘍細胞および線維成分の各時相の信号強度を測定し、time intensity curve (TIC)を作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験内容に変更はなかったが、当初予定していた学会出席の変更により未使用額が生じた。この未使用額については、令和5年度の学会出席に充てる。
|