研究課題
研究代表者・中松は任意の形状の高線量域と低線量域をつくり出すことが可能となる強度変調放射線治療(IMRT)の臨床的応用を行ってきた。本研究では特に悪性脳神経膠腫に着目し、腫瘍体積(GTV)への1回線量増加を目的とした新たなSIB-IMRT法の開発を行っている。放射線治療後の重篤な晩期有害事象である放射線脳壊死は高線量域に一致して発生することが報告されている。現在、特に重篤な腫瘍である膠芽腫に対する新たな治療戦略の開発を目的とした前向き臨床試験を実施しており、本研究資金を活用している。さらに、転移性脳腫瘍に対する定位手術的照射の臨床症例を積み重ねている。 本年度、中松は脳腫瘍に対する臨床的基礎研究として若年者に多くみられる胚細胞腫瘍の放射線治療後の脳壊死を調査した。その結果、安全に行われていることを確認しその成果を2019年日本放射線腫瘍学会にて発表を行った。 研究分担者の土井は、8 週齢雄性C57BL/6J マウスを使用し、再照射後の正常組織における生体反応の初回照射時との違いを明らかにすることを目的とした研究成果を論文にて発表した(Doi H, Tamura M, Nakamatsu K, et al. Experimental animal model of re-irradiation to evaluate radiation-induced damagein the normal intestine. Anticancer Res.2020;40(4):1981-1988.)。また、土井は放射線性脳壊死および悪性脳神経膠芽腫に対する最新の情報を収集するため、2019年ASTRO(American Society for Radiation Oncology)に参加しポスターでの発表を行った。研究分担者の藤田らは、現在転移性脳腫瘍、特に非小細胞肺癌からの脳転移症例について手術標本を用いた研究結果を論文投稿準備中である。
3: やや遅れている
脳神経膠芽腫に対するSIB法について臨床的データ解析が進んでいる。一方で脳壊死マウスモデルの作成が進んでいない。
今後は放射線脳壊死マウスモデルについて条件検討を継続し、実験系の最適化を目指す。また、臨床像を再現したグリオーマ放射線脳壊死マウス実験モデルを構築し、免疫細胞遊走因子である各種ケモカインおよびその受容体の遺伝子発現を解析する。
令和 4 年度は他の研究課題と重複する実験系があり、そちらを遂行することで予備実験にかかる費用の一部が支出可能となったため、次年度使用額が生じることとなった。令和 5 年度は遺伝子解析および AI 病理解析のための多重免疫組織染色が重点的に行われる予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
Cancer genomics & proteomics
巻: 20 ページ: 195-202
10.21873/cgp.20374
Am J Cancer Res.
巻: 12 ページ: 1129-1142
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 591 ページ: 62-67
10.3892/mmr.2022.12754
Mol Med Rep.
巻: 26 ページ: 238
Anticancer Res.
巻: 42 ページ: 4173-4178
10.21873/anticanres.15917
Cells.
巻: 12 ページ: 86
10.3390/cells12010086