研究課題
膵がんは早期発見が難しく、生存率の低いがんである。既存の画像診断法では、早期膵がんを検出することは非常に困難なため、膵がん革新的画像診断法の開発が急務となっている。これまでに研究代表者らは、多くの膵がんで過剰発現が見られるEGFR(上皮成長因子受容体)に対する抗体Cetuximabを、二官能性キレート(p-SCN-Bn-PCTA)を用いて放射性核種64Cuで標識した「64Cu-PCTA-Cetuximab」を開発した。また本薬剤を腹腔投与後、陽電子放射断層撮影(PET)を行い、従来のFDG-PETでは検出が難しい3 mm大の超早期膵がんを明瞭に検出できることを非臨床試験で明らかにした。そこで本研究では、こうした膵がん超早期画像診断法の臨床試験実施に向け、本薬剤の治験提供を目的とした製剤化研究を実施した。2023年度は(1)原料となるPCTA-Cetuximabの保存性の検討、(2)64Cu-PCTA-Cetuximabの細胞結合性評価、(3)治験薬処方・品質試験法の設定を行った。(1)の検討では、0.1 M酢酸緩衝溶液(グリシン、ポリソルベート80を含む)中でPCTA-Cetuximabを保存した場合において、12ヶ月後に64Cu標識を行っても95%以上の標識率を得られた。また(2)の検討ではEGFR高発現細胞を用いて、合成直後および長期保存後(12ヶ月間)のPCTA-Cetuximabをそれぞれ64Cu標識した薬剤の細胞結合性を比較し、有意な差は見られないことがわかった。さらにこの結果を踏まえ治験薬処方・品質試験法の設定を行った。本研究により、64Cu-PCTA-Cetuximab治験薬の安定供給に必要なPCTA-Cetuximabの保存条件ならびに長期保存による細胞結合性への影響がないことが明らかとなった。この成果をもとに臨床試験開始に向けた準備をさらに進めて行く。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Pharmaceuticals
巻: 16 ページ: 1341~1341
10.3390/ph16101341