研究課題/領域番号 |
22K07669
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
白石 順二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (30551311)
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研究分担者 |
小林 聡 金沢大学, 保健学系, 教授 (30313638)
南 哲弥 金沢医科大学, 医学部, 教授 (60436813)
田中 利恵 金沢大学, AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター(保), 准教授 (40361985)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 未病 / 肺がん / CT検診 / 喫煙 / 画像データベース |
研究実績の概要 |
本研究では,研究代表者らが3年をかけて完成させた,過去15年間,継続的に蓄積された4万5千例以上の肺がんCT検診の大規模画像データベース(石川DB)から構築した世界初の「肺がんの未病状態の症例の画像データベース(未病DB)」と,これまでに蓄えたコンピュータ診断支援(CAD)の技術開発の経験と知識を生かし,“肺がんの未病状態での検出”を実現するための人工知能(Artificial Intelligence: AI)による診断支援システムの開発を試みている. 本研究では,長期にわたり継続的に検診を受診している被検者のうち,最初のうちは正常と判定されながら,途中で異常所見が発見されたグループについて,異常所見が発見される前の,正常と判定された最後の年の段階を未病と定義した.この従来では正常と判定されたグループに潜む未病の状態を,様々な付帯情報(性別,喫煙歴,年齢など)や,AIを用いたCT像の画像解析結果で明らかにし,肺がんの未病状態での検出を可能とするAI診断支援システムの開発をゴールとする. 本研究の2年目である2023年度は,2022年度に引き続き,全検査数45,337例の石川DBに含まれる被検者について,非喫煙者と喫煙者の判別が可能かどうかを試みた.まず,初期検討として全症例の中から,検診時に喫煙指数を0と申告した非喫煙者1000例,肺がんのリスクと考えられている喫煙指数500以上の喫煙者1099例を抽出して評価対象とした.肺野の領域分割を行ったCT画像の全スライスについて等方性ボクセル化処理を行うことで3DCTボリュームデータを作成し,画像特徴量を算出し,求めた画像特徴量を入力として,機械学習による喫煙者と非喫煙者の分類を行った結果,喫煙者と非喫煙者の分類では,感度は64.5%,特異度は68.5%となり,診断の正確さの指標となるROC曲線下の面積は0.727となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石川DBに含まれる全検査のうち,2099例については,喫煙者と非喫煙者の区別が肺野領域の3D再構成ボリュームデータのヒストグラム解析により実施可能であることが判明したが,同時に,喫煙・非喫煙と肺がん発生の相関が低く,肺がんを未病を段階で検出するためには,喫煙・非喫煙の判別とは異なる画像特徴量(またはボリュームデータに内包される隠れた因子)を同定することが必要であることが判明した.このことは今後,研究を進めるうえで大きな変換点になると考えられるが,新たな知見を得る確率は高くなったと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
肺がんの危険因子として知られている喫煙指数と肺がん発生との相関が低く,肺がんを未病を段階で検出するためには,喫煙・非喫煙の判別とは異なる画像特徴量(またはボリュームデータに内包される隠れた因子)を同定することが必要であることが判明したため,今年度は,まず,全検査の中に含まれる肺がんを含む呼吸器系の疾患症状(すりガラス状陰影,線状陰影,結節状陰影,ハチの巣状陰影,無気肺,硬化等)の有疾患者とそれ以外の正常な被検者との判別を試みる.具体的には全検査の中で「肺炎、良性腫瘍、気胸など疑い(D2)」,「肺がんを否定できない(E1)」と「肺がんを否定できず,強く疑う(E2判定)」と判定を受けた1,116例(D2: 613例,E1:420例,E2:83例)と異常なしと判定された29,462例からランダム抽出する約1,500例の肺野ボリュームデータを様々な観点から加工した上で入力として,AIによる分別作業を試みる.ここで,ボリュームデータを加工するのは,全データを一度にAIに入力するした場合に,何をAIが学習して判別に用いたのかが不明になるのを防ぐためである.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度当初は,依然として新型コロナによる規制で国内の医療機関における会議の実施が困難であり,また,当該年度後半は主研究者の所属機関変更に伴う事務処理のため,開催を次年度に繰り越したため.
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