研究課題/領域番号 |
22K07693
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片岡 正子 京都大学, 医学研究科, 講師 (10611577)
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研究分担者 |
飯間 麻美 京都大学, 医学研究科, 助教 (60748797)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 乳癌 / MRI / 核医学 / マルチパラメトリック / De-escalation |
研究実績の概要 |
今年度は、超高速ダイナミック造影MRI(Ultrafast dynamic contrast enhanced MRI:UF-DCE MRI)UF-DCEと拡散強調画像等MRIシーケンスを用いたマルチパラメトリックイメージングから検討を開始した。 UF-DCE MRIに関しては、研究の国内外の現状についての把握を2本総説の形でまとめ、浸潤癌の増殖能やサブタイプ分類との相関、従来の造影MRIとの相違について検討した。国内外の学会で発表後、一部は論文化した(Ohashi et al.2023)。 また術前薬物療法後のMRI・PET所見の意義については乳癌診療ガイドラインで該当するクリニカルクエスチョンを検討した。MRI PETについてシステマティックレビューを行い39編を対象として検討したが、個々の研究のばらつきが大きく推奨を提唱するには至らず、現状のエビデンスでは不十分なことが判明した。さらに術前薬物療法での治療効果判定、特にUF-DCE MRIによる術前化学療法後の治療効果判定の結果もまとめ発表した(Honda et al. 2022)。 拡散強調画像は血流情報とは相補的であり、血流情報との組合わせで診断能向上が期待される。縮小手術においては正確なMappingが必要であるため、高空間分解能を有するReadout-segmented DWI法による診断法につき、診断のためT2,T1他の非造影シーケンスの画像も合わせた上での決定木開発を行い、学会及び論文発表を行った。こうした高分解能拡散強調画像は、詳細な形態が評価可能であり、造影MRIとのFusion画像により悪性の可能性が高い病変の局在が同定できる可能性がある。並行して、乳房専用PETとMRIの比較を、当院乳房専用PETで検出された病変に関して検討し、Fusion手法を用いて両モダリティでの所見の特徴を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展している。今年度はMRIに重点を置いてマルチパラメトリック画像の個々の要素についての研究、発表、論文化を進めてきた。R5年以降の基礎的な検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
臨床におけるマルチパラメトリックMRIの有用性については昨年度も学会発表や総説の形でまとめてきた。R5年度はそれらを実際の研究として検証することを具体的な目標に掲げる。まずは、UF-DCE MRIおよび高分解能DWIの情報を合わせて効率的に表示するための Map表示法を検討する。それとは別に、UF-DCE から病変毎に得られる平均MS、TTEなどのKinetic parameter やDWIから得られるADC値、を算出し、それから病変の病理組織診断・サブタイプや悪性度を推測、数値化するためのモデルを作成する。 また、術前診断画像を対象に上述シーケンスを用いてマルチパラメトリックなデータを取得し、病変進展範囲の精度を改善できるかどうか検討する。 さらに、R5年度は、術前薬物療法の治療前後での評価と残存病変の評価にたいしても検討を行う。乳癌に隣接する血流豊富な乳腺症等の良性病変、薬物療法後の炎症・瘢痕を対象とし、高精度マルチパラメトリックイメージングを適用、術前治療後の手術療法の縮小を目指し、確実な進展範囲の評価ができるよう鑑別精度を向上させる。 あわせて、乳房専用PETなど核医学検査に関する今までの知見をふまえ、これらの代謝情報も合わせて用いた乳癌術前評価についても症例の蓄積を待って解析を開始する予定である。年度後半においてはマルチパラメトリックな診断法の確立を目指していくつかの手法について検討予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画を上回る海外渡航費用(円安やフライト代の上昇等)により、物品購入計画を見直した。本格的な解析は本研究の後半にあたるため、計画の進捗を見ながら購入を検討予定である。
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