研究課題
これまで500例以上の肺がん症例を解析ソフトで見てきたところ、肺がんの組織により画像所見が大きく異なり、リンパ節腫大の描出のされ方も異なることが、解析を複雑にしている可能性があることが判明した。これは肺がんの組織型は腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌などと多彩であることが知られており、その組織学的な差を反映して画像上も多彩な所見を呈する。また近年肺がん組織と特定の遺伝子変異との関連も報告されてくるようになってきたことと関連している可能性がある。一方、肺がんリンパ節転移巣は当然肺がん原発巣と同じ病理組織を呈するため、それぞれの肺がん組織において目的とする画像パラメータ(テクスチャなど)が異なってくる可能性もあるため、リンパ節転移巣の評価を行うためには、肺がん原発巣の評価も必要であると仮説を立てた。この仮説が正しいことを証明する第一歩として、まずは肺がん組織型あるいは遺伝子変異と画像所見の症例を蓄積し、これまでに報告されているエビデンスについてのレビューを北米放射線学会RSNA2022に教育展示として発表し、学会においてCum Laudeを受賞した。また同時に同学会雑誌Radiographicsに招待され、論文を投稿した。また同時に実験的に解析ソフトウェアにて定量解析を行ったところ、肺結節の吸収値が低い方、つまりスリガラス成分を多く含む方が分化度の高い肺腺癌であることが多かった。また肺腺癌内における低分化成分により画像定量値も変化することが示唆された。また中分化型扁平上皮癌の背景肺は気腫率が他の組織型よりも高い傾向が見られ、原発巣のみの評価だけではなく周囲の環境も含めた総合的な画像評価の重要性が示唆された。これらの知見から、原発巣と関連したリンパ節転移画像解析により各組織型毎、肺結節の部位毎によりリスク因子が異なる可能性があると考えられた。
3: やや遅れている
肺がんの症例蓄積および肺がんおよび各リンパ節のセグメンテーションに予想以上に時間がかかるため
時間短縮のためにまずは肺がん組織を限定することと、肺がん原発巣の部位を限定して解析していくこととする。
当施設では解析ソフトウェアをアカデミック版で購入することが不可能であり、解析ソフトウェア購入の代金が当初の見積もりよりも非常に高くなってしまうことが判明したため、翌年度の予算と合算して購入する必要がでてきたため
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