研究課題/領域番号 |
22K07712
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
田代 睦 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 准教授 (60447274)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カーボンナイフ / 定位炭素線治療 / 微小ビーム / 照射技術 / 重粒子線 / 炭素イオン線 |
研究実績の概要 |
定位放射線治療は微小標的に対して高線量を照射できる治療法であるが、周辺線量の広がりが無視できないことから、周辺リスク臓器への副作用が懸念され、しばしば標的への不十分な線量投与を余儀なくされる。炭素線は急峻なブラッグピークや小さな側方散乱による高い線量集中性、高い生物学的効果を有する。これらの特長と超高線量率を兼ね備えた定位炭素線治療(カーボンナイフ)照射技術を開発することを目的とする。 最小1mmサイズの微小炭素線を形成し、動物の微小標的に対してピンポイントに照射可能な技術を開発する。そのために、微小ビームに対する線量・線質(LET)分布の計測手法の確立、動物CTから炭素線の阻止能を求め打ち込み深さを制御する手法の確立、微小ビームに対する線量・線質分布計算モデルの開発と実装、高精細な動物用位置決めシステムの開発を行う。これら各要素を実証しながら照射技術の仕様・性能を明らかにすることが具体的な目的である。 当年度は、動物CT画像を用いて動物体内の炭素線打ち込み深さ制御を可能とするために、動物CT装置に対してCT値-炭素線阻止能比変換校正法を試行した。動物CT用に校正ファントムを作製して校正測定を行い、動物CT-阻止能比変換曲線を得て、いくつかの生体物質のCT値と炭素線水等価厚を実測することにより、炭素線阻止能比変換の精度を調べた。それに加えて、校正用物質として必要となる骨代替容器の生成の手間や濃度のバラツキを低減する方策として、市販の骨ファントム物質を用いる方法を試行した。その結果、筋肉や脂肪に近い生体物質に対して、CT値-阻止能比変換と炭素線による実測値との差は5%程度以内であった。また、代替物質を固体に変えた場合、従来法と比べて3%程度以内の精度で一致した。以上のことから動物CTを用いた炭素線の打ち込み深さは5%程度の誤差内で見積もることが可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施計画としては、大きく以下の4つに分類される。①微小ビームの線量分布やLET分布の測定、②動物体内の炭素線打ち込み深さ制御、③体内線量・LET分布計算システム(治療計画)の開発、④位置決めシステムの開発、である。 本年度は、主に②として、動物CT画像を用いて動物体内の炭素線打ち込み深さ制御を可能とするために、動物CT装置に対してCT値-炭素線阻止能比変換校正法を試行した。動物CT用に校正ファントムを作製して校正測定を行い、動物CT-阻止能比変換曲線を得て、いくつかの生体物質のCT値と炭素線水等価厚を実測することにより、炭素線阻止能比変換の精度を調べた。その結果、現状の変換校正方法の精度が確認できた。 さらに①の線量・LET分布測定の検討も行っている。 以上より、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
動物CT装置の阻止能比変換校正については、生体物質や条件を広げてより詳細に調べる予定である。またLET分布の定量化についても検討を進め、ビーム試験を行う予定である。その他、様々な照射形状、特に拡大ブラッグピークや標的遠位側の打ち込み深さの多様性に対応するための動物照射用リッジフィルタや補償フィルタについても検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析用の計算機やソフトウェアの購入および学会参加が予定通り進められなかったため、また、動物CT校正用ファントムが当初より低額に抑えられたため、使用額に差が生じた。今後、上記の物品購入や旅費、さらにファントム用具の購入を進める予定である。
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