研究課題/領域番号 |
22K07735
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研究機関 | 一般財団法人脳神経疾患研究所 |
研究代表者 |
佐藤 まり子 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, 医長 (30645263)
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研究分担者 |
廣瀬 勝己 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, 診療所長 (60623767)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / BNCT誘発性悪心・嘔吐 |
研究実績の概要 |
1) SERAによる線量評価についての再検討 SERAは2003年に開発されたLinuxベースのプログラムであり、モンテカルロコードの輸送計算負荷を極力下げるために、に1cm*1cmグリッドのモザイク状のデータに変換されて計算がなされる。SERAで線量計算が施行された症例10例において、BINV評価臓器への輪郭入力を実施してみたもの、症例によって評価臓器から生成される輸送計算グリッドの生成位置がそれぞれのCT上のジオメトリーに応じてずれてしまい、適切な評価に耐えられないと判断された。 上記の検討をもとに、SERAによるBINV評価臓器の線量計算は断念した。 2) RayStationとNeuCure Dose Engineを用いた2mm-grid計算ボクセルでの線量評価の実現に向けた取り組み SERAに代わり、現在保険診療で使用されるRayStation (RaySearch Laboratories) およびBNCTモジュールNeuCure Dose Engine (Sumitomo Heavy Industries, Ltd.)で構成されたTreatment Planning System (TPS)による2mm-grid計算ボクセルでの線量計算を採用することにした。しかしながら本TPSでは新規にBINV評価臓器輪郭を追加すると、本来必要のない再計算を実行しなければ新規臓器輪郭の線量が計算されない。本検討に必要となる2mm-gridでの線量計算にはおよそ9時間を要すため、training cohortの100例の解析に40日以上を要し、現実的でない。 そこで次に、本来必要のない再計算を省略する仕様に変更するようにRaySearch社との協議を複数回に渡り実施した。この結果、次期バージョンより再計算を省略可能な仕様への変更が認められることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の実施項目である予測スコアモデル構築に際して、BINVの線量反応効果が報告される頭蓋内臓器の線量とBINV発症の関係性を明らかにするための検討をSERAを用いて行う予定であった。しかしながら、SERAの線量計算のプロセスを紐解くと、非常に粗いグリッドでの評価を行っていることが判明し、微小な頭蓋内臓器の線量評価には全く不向きであることから研究計画の変更を余儀なくされた。これによりおよそ1年程度に渡る追加検討が必要となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
1) 線量評価項目以外での予測スコアモデルの確立: 本研究開始前に行っていた患者因子のみでの予測スコアモデルについてのpreliminaryな検討結果に基づいて、本解析を実施する。「Training cohort(N=100)の患者因子とBINV発生率の関係を解析する。単変量解析によって関係性が疑わた患者因子をリスク予測のスコア因子として採用し、予測スコアモデルを作成する。さらに、ここから算出したスコアの感度と特異度をプロットし、高リスク患者を識別するしきい値を明らかにする。 2) RayStationによる2mm-grid計算ボクセルでの線量評価: RayStationの新規バージョンを用いて、それぞれの症例ですでに実施してある治療計画にBINV評価臓器のROIを追加して、同臓器の線量評価を行う。その後、BINV発症の関係性を明らかにする。 3) 臓器線量を含めた予測スコアモデルの作成: 明らかにされた関連性のある臓器線量を含めた新たな予測スコアモデルを作成する。 4) Test cohortにおける予測スコアモデルの感度、特異度評価: 各患者でスコアを計算し、感度、特異度を算出してtraining cohortと比較する。 5) BINV高リスク患者における制吐剤予防投与の有効性評価: 予測スコアモデルを用いてBINV高リスクと判定された患者130名を対象とし、治療当日の照射1時間前にグラニセトロン2 mgを1日1回経口投与し、Day1-3の同時刻にも同様に経口投与を行う。悪心・嘔吐の有無と制吐剤の使用状況について調査票へ記入してもらう。急性と遅発性の悪心・嘔吐について完全制御率を算出し、training cohortおよびtest cohortの登録患者計130名のデータと比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の変更を余儀なくされた。これによりおよそ1年程度に渡る追加検討が必要となってしまった。同追加検討は今年度でおよそ終了し、当初の研究計画項目は次年度より実施することになるため、今年度研究費を丸々次年度へと繰り越す必要が生じた。
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